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2019.12.13 夜

薩摩隼人、京都に見参!!@CAINOYA

イタリアン・ピザ

京都市

50000円〜

★★★★★

明治維新の故郷とも呼ばれる薩摩から一人のシェフが京都にやってきた、鹿児島の地で唯一無二の料理を作り上げ、全国の食通達を驚かせたレストラン『CAINOYA』。激動の時代を駆け抜けた薩摩藩士達のように、同じ薩摩隼人である塩澤隆由の挑戦が始まった。彼の武器は刀ではなく、代名詞とも呼ばれる”ガストロバック”。ガストロバックとは減圧加熱調理器のこと。密閉した鍋の中の文字通り気圧を減圧して調理する鍋で、言うなれば圧力鍋の逆バージョン。気圧の影響がなくなった食材は中の空気が膨張して隙間ができ、ここに出汁などの旨みを染み込ませる。そうして、食感は生のようなのに、煮物のように味の染みこむという離れ業をやってのけるのだ。 

 ただ勘違いしないでほしい、彼は決して分子ガストロノミー信仰の類のシェフではない。そして、そこには業界が抱える課題へのヒントさえも隠れている。例えば、野菜。これまではいかに美味しく新鮮な野菜を手に入れるかが最重要だったと思う。だが、彼は採れすぎた野菜をどうするかという視点に立ち、ガストロバックを駆使することでそれらの食材をたちまち絶品の食材に変えていくのだ。前置きが長くなったが、まずは最初にあなたの前に置かれたレタスを食べてみてほしい。向こうが透けてみえるテクスチャー、シャキシャキという擬音語はこのためにあったと思うだろう食感、これらがこれまでの説明を一瞬で納得させてくれることでしょう。これはミネラルウォーターをガストロバックしたレタスだ。 

料理のキーワードは、説明してきた「ガストロバック」、鹿児島を中心とした「九州」、そして挑戦の地である「京都」。全ての料理がこれらのキーワードとブリッジしていることで、右脳で感じる”味”に加えて、左脳で理解する”物語”を感じさせます。ぜひ、そんなキーワードとのリンクにも注目してコースを楽しんでみてほしい。それでは、それぞれの料理を紹介していきましょう。 

「丸大根」京都の伝統野菜である丸大根。鶏のブロードをガストロバック。京都風でありながら京都風ではない一品が挨拶代わり。優しい味わいながら、きっとインパクトをもって迎えられるだろう。 

 「自家製栽培安納芋」鹿児島を名産地とする安納芋。皮付きの土感のある味わいが鹿児島の土壌を想像させる。ベシャメルソース、卵黄、トリュフと合わせた一品。 

 「玉葱のパイ包み焼き」バターで3時間ゆっくり火入れ。パルミジャーノの温冷を使い分けたアウトプットが味わいをキリッと際立たせます。 

 「ガストロバック”sushi”」これは寿司ではなく”sushi”。小肌にビネガー、烏賊にアサリ出汁、鰹には自身から煮出した旨味をガストロバック。青リンゴを使ったガリにはガリ酢をガストロバックするという徹底ぷり。 

 これは京都への移転に際して最も力を入れた新作。鹿児島で試作をいただいた際は正直心配していたが、オープンまでにピントを合わせてきたのはさすがだ。繰り返しになるが、これた寿司ではなく、全く新しい”sushi”だ。 

 「ビシソワーズ」これはCAINOYA流のじゃがバター。ジャガイモのスープ、バターのジェラート、胡椒の泡と因数分解し、リストランテにふさわしい料理に仕上げている。こういった馴染みの料理を昇華していくのも彼のスタイルの1つ。また、お酒を預かる奥様のペアリングにもぜひ注目。同じ芋同士と鹿児島が誇る芋焼酎を合わせるのは本当にユニーク。 

 「鰤」個人的にお気に入りのCAINOYAの定番料理の1つ。アラに味噌をといてガストロバックした、いわゆる風の西京焼きだ。食感は鰤しゃぶのようなのに、京都らしい西京味噌の風味は西京焼き以外の何者でもない。ちなみに、この鰤は10月に北海道であがったもの。食材の保存能力の高さにも驚かされます。 

 「豚肉と野菜の椀」様々な出汁でとったスープに味噌を合わせる。鹿児島らしい黒豚と合わせて、段違いの豚汁を完成させております。 

 「焼鳥」こちらも鹿児島産。タレに漬け込んだという卵黄と合わせて鳥すきのようなアウトプットに仕上がります。 

 「クリスタルサラダ」冒頭でいただいたシャキシャキ野菜の盛り合わせ。箸休め的な位置づけだが、それまでも美味しいというおまけ付き。 

 「ステーキ」天草の未経産牛の黒毛和牛のシンタマ。素材、火入れ、共に素晴らしい。 

 「鰻」もちろん鹿児島産。白焼きとタレ、それぞれへのペアリングが面白い。 

 「リゾーニのリゾット」リゾーニとは、米粒の形をしたパスタの一種。パスタとリゾットを一緒に食べる一挙両得ぷり。味わいは視認できるセコ蟹に加えて、その殻でとった出汁も。濃厚な味わいを逃す柚子の使い方が秀逸。 

 「イチゴタルト」イチゴにビネガーをガストロバック。甘みはこれでもかという程引き出す。 

 最後に。実はミトミえもん、今回の京都の移転に多少なりとも関わっている。尊敬する先輩から京都に「新しい料理」を提案できるシェフはいないかと相談を受けた。真っ先に思い浮かんだのがCAINOYAの塩澤シェフ。だって彼の料理は”NOT THE SAME”だから。彼の、彼の周りの人生を変えてしまった事への責任を感じていたが、今日の料理を食べて胸を撫で下ろした。だって、京都で食べた彼の料理は京都に来たことで更に進化していたのだから。

1回目の訪問
「鹿児島からの維新再び。日本の料理を変える男。@カイノヤ」
https://blog.33inc.jp/2016/11/05/27600/

CAINOYA
京都府京都市下京区河原町通四条下る2丁目稲荷町318-6 グッドネイチャーステーション 2F
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260201/26033524/

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