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2016.11.05 夜

鹿児島からの維新再び。日本の料理を変える男。@カイノヤ

イタリアン・ピザ

鹿児島・南薩摩

5000円〜9999円

★★★★★

念願だった『カイノヤ』への初訪問。羽田から飛行機で約2時間かけて鹿児島へ。気が焦りすぎたのかずいぶん早く到着してしまった。せっかくだからと出かけた観光。維新の志士達が鹿児島で育ったのはご存知だろうか?

西郷隆盛、大久保利通、東郷平八郎など維新の志士達の生誕の地をまわる。全員が徒歩圏内に生まれていることに驚きです。東京から遠く離れた地で知識と勇気を武器に日本を変えたのですね。

そして100年以上の時を経て再び日本を変えようとする男がいる。料理界に革命を起こすカイノヤの三代目塩澤隆由氏である。彼の武器もまた「NOT THE SAME」という常に進化しようという強い意志だ。そして世界が注目するもう1つのの彼の武器が「ガストロバック」だ。

ガストロバックとは減圧加熱調理器のこと。密閉した鍋の中の文字通り気圧を減圧して調理する鍋のこと。圧力鍋の逆バージョンって感じですかね。気圧の影響がなくなった食材は中の空気が膨張して隙間ができる。ここに出汁などの旨みを染み込ませるわけだ。

出来上がった料理は、食感は生のようなのに、煮物のように味の染みこんだ食材が作りださせる。このアプローチにおけるアイデア、技術が卓越しているのが塩澤氏のガストロバックだ。

さっそくいただいてみましょう。「河豚と自家栽培無農薬デストロイヤーのF&T」2016

河豚のフィッシュ&チップスとは面白い。もちろんただのフィッシュ&チップスではない。河豚のアラの出汁をひいて白身に浸透させていく。河豚のタンパクな印象を損なわずに旨味がジュワってにじみ出る。フィッシュ&チップスやタルタルソースはカジュアルな印象を与えるが、まるで魔法にかかったように上品さが伝わります。

出ました、鹿児島の安納芋。「安納芋のベシャメルとキクイモ」2012

安納芋のホワイトソースにキクイモのフリットに白トリュフで香り付け。卵黄のコンフィにも白トリュフオイルを、ミトミえもんはこの海でおぼれて死にたい。安納芋の甘みとの相性が抜群です。

じゃがバターの再構築である「ヴィシソワーズ バターのジェラートと胡椒の泡」2007

それぞれでも完成度が高いのだが、ヴィシソワーズのじゃがいも、バターのジェラート、胡椒の泡を分離。再構築って大好きです。食材や料理を完璧に理解しないとできないですからね。

「チポッラカラメラータ パルミジャーノレッジャーノチーズのジェラート」2006

玉ねぎのパイ包み焼き。玉ねぎはバターで3時間かけてキャラメリゼして甘味をひきだす。上には冷たいジェラートが乗せられ、温度のギャップ、味覚のギャップ、食感のギャップが舌から脳に様々な情報を伝えてくれます。

スペシャリテの1つ「秋刀魚とポルチーニ茸」2005
お気づきかもしれないがメニューの後ろに書いた数字。これはメニューが完成した年代だ。10年以上前にこれだけの料理が完成していたなんて。

秋刀魚のミルフィーユ仕立てで、切り身から骨を一本ずつ抜いて、肝を抜いて焼き上げたそうだ。一枚一枚重ねて秋刀魚から出る脂だけで固めた秋刀魚をまるまる楽しめる一品。下に敷かれたポルチーニのソテーの熱で秋刀魚の脂が溶け出します。秋刀魚まるまる+αを楽しめる料理だ。美味すぎる。

常連さん向けには違う魚を。「鰤と大根」2011
これもある意味再構築。鰤と大根の旨味の相互ガストロバックだ。

鰤には大根の旨味、大根には鰤の旨味を低圧浸透。鰤の頭と骨を焼き、大根からは煮詰めた出汁が提供される。食感はレアなのに味がしっかり。ガストロバックらしい生でも煮物でもない食感がここに完成している。煮ない鰤大根の完成だ。ちなみにガストロバックでは強い出汁をいれるので土台がしっかりしていないといけないそうだ。

「ブルターニュ産ブルーオマールのスプリングロール」2016

「鰻」2015

オマールには殻から取り出したアメリケーヌソースを、鰻には骨でとった出汁を低圧浸透。まさに海老や鰻一匹が持つ旨味をすべて堪能。ここまでやってくれれば食材も満足というものでしょう。春巻きの皮を挟んでの間接的な火入れもまた新鮮で面白く、鰻は煮と焼で調理法の面白さを味あわせてくれる。

さて次は何を低圧浸透しますか!?もう少々のことじゃ驚きゃしませんよ。今度は水です。水!?箸休めかと思いきやサラダすらも絶品なものに仕上がる。名前は「クリスタルサラダ」。

ミネラルウォーターを野菜に低圧浸透した結果、透けてみえるほどの透明感。ガラス細工のように美しく、みずみずしさは野菜が本来持つ以上のものが提供される。今まで使っていたシャキシャキ感という言葉を返してほしい。まるで飲み物のようです。

「未経産黒和牛の 熾火アイアンステーキ」2016 
未経産牛のしんたまの熾火焼き。しっとりした火入れの秘密はこれか。炭の焦げの味などの匂いをつけず、本当にピュアな肉の味を提供してくれる。こちらには塩やトレハソースが低圧浸透。霜ふりにもかかわらず肉汁が溢れ出すのではなく、まるで赤身のように旨味がじわじわ溢れだします。

何気にお気に入りだったのが付け合わせのキャベツ。先ほどのクリスタルサラダと同様にお父上の畑でとれたもの。さらにジンギスカンソースも父親の味なのだそうだ。

「ピーチcainoya風カルボナーラ」2003「白子と白トリュフのリゾット」2016トスカーナの伝統的な手打ちパスタ。今日から始まった白トリュフは最高にカルボナーラに合いますね。

NOT THE SAMEのコンセプトの新作の白子のリゾット。河豚の出汁でガストロバックした白子と河豚の出汁で炊いたリゾットはそれぞれ単体でも成立するもの。特に米が美味すぎてびっくり。これもまだまだ途上と語る。こうして完成していくのですね。

「葡萄とチーズケーキ」

「cainoya風ティラミス」

「マンティルーフ フィナンシェ カボチャとチョコレート」

デザートにも余念がない。実はコーヒーが苦手なのだが、cainoya風ティラミスにはコーヒーを使わない。苦味を黒糖のキャラメリゼで作っているのだ。

鹿児島からの維新が再び起こりそうな気配。この男、日本の料理をいや世界の料理を変えるかもしれない。

カイノヤ
鹿児島県鹿児島市城山町2-11 ドルチェヴィータ B1F
https://tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46000070/

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