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2025.06.09 昼

スナックの残り香に、ネパールの暮らしが宿る@ボエチェー

世界料理(アジア)

船橋・市川・浦安

1000円〜2999円

★★★☆☆

船橋駅前、日常の喧騒に紛れるようにして佇む雑居ビル。その入り口で、ネパールの国旗がひらりと迎えてくれる。赤と青の三角形が、古びたビルの外観に不思議な調和を見せながら、ここが異国への入り口であることを密やかに知らせている。

階段を上がった先にあるのが『ボエチェー(BHOYE CHHEN)』。扉を開ければ、スナックの居抜きであることは一目瞭然。けれど、その空間にはネパールの生活感がじわじわと浸透している。壁に貼られた神様の絵や現地のポスター、ネパール語のメニュー表、質素なテーブルセット。それらが静けさの中に確かな異国の空気を漂わせている。作られた異国情緒ではなく、時間をかけて染み込んだ“現地の匂い”がここにはある。

そして供されたのが「タカリスペシャルセット」。中央にどっしりと盛られた白米「バート」、そのまわりを囲むように並ぶ高台の器たち。カレー、ダール、タルカリ……それぞれがひと段上に置かれることで、どこか祭壇のような佇まいを見せている。

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「チキンカレー」は、しっとりと煮込まれた鶏肉が主役。スパイスは控えめながら、しっかりとした塩気でごはんを受け止める力がある。「ダール(豆のスープ)」は黒豆を使ったとろみのある仕立て。意外にも塩気が立ち、豆の香ばしさと旨味がどっしりと舌に残る。「タルカリ(野菜カレー)」ではじゃがいもの存在が目立ち、甘みと香りが穏やかで、他の強めの味を中和する役割を担う。「サーグ(青菜炒め)」は、香味の効いたほうれん草。火入れはしっかりで、青さの主張が印象に残る。「アチャール(ピクルス)」はマスタードシードが効いた酸味系で、鋭く風味を引き締めてくれる。

「パパド(豆せんべい)」の軽快な食感が箸休めとなり、「ギー(澄ましバター)」をひとさじ垂らせば、全体の味に奥行きと丸みが加わる。プレートの上で混ぜ、整えながら食べ進める——その行為自体が、この料理の醍醐味だ。

デザートには、甘いシロップに漬けた「グラブジャムン」をヨーグルトで包んだもの。そしてソフトドリンクにはラッシー。冷たさと酸味がスパイスの余韻をやさしく受け止めてくれる。気取らない構成ながら、最後までよく練られている。

『ボエチェー』とは、ネパール語で“食事の家”。その名の通り、ここには飾られた異国体験ではなく、異国の普通のごはんがある。場末のスナックの記憶と、ネパールの生活感。そのふたつが奇妙に溶け合った空間で食べるタカリの一皿は、どこか静かで、心に残る味だった。ご馳走様でした。

ボエチェー
047-400-3958
千葉県船橋市本町2-11-22 友山ビル 2F
https://tabelog.com/chiba/A1202/A120201/12055840/

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