2025.05.06 昼 気楽な旨味の実験場。@キッチン きらく ラーメン・つけめん 秋葉原・神田・水道橋 1000円〜2999円 ★★★★☆ 神保町の路地裏。静かな通りの階段を上がると、モダンでどこか懐かしさもある空間『キッチン きらく』が現れる。2023年にオープンしたこの店を手がけるのは、「麺や七彩」出身の阪田博昭氏。ラーメンで名を馳せた料理人が、今はラーメンにとどまらず、洋食やカレーといった幅広いジャンルに柔らかく歩みを進めている。そのスタンスは、“キッチン”という屋号にも滲んでいるように思える。 看板メニューの一つが「稲庭中華そば」。 稲庭うどんの製法を応用した乾麺は、表面は滑らかで“ウェット”な舌触りを保ちながらも、内側にはしっかりとした芯のあるコシが共存している。この絶妙なバランスが、鶏油の香りをまとったスープと美しく絡み合い、喉を滑り落ちる感覚すら心地いい。醤油ダレに潜むほのかな酸味が全体をキリッと引き締め、淡いようでいて記憶に残る一杯に仕上がっている。 もう一つの主役が「黄色いカレー」。名前の通り鮮やかな黄色が皿を覆い尽くすそのビジュアルは、見た瞬間に記憶を刺激する。とろりと粘度の高いルーが、玉ねぎと豚肉をやさしく包み込み、口に含めば出汁の旨味と穏やかなスパイス感がじんわりと広がる。スパイシーすぎず、甘ったるくもない。この絶妙な加減が後を引く。途中でウスターソースを垂らせば、重厚なルーに酸味が加わり、味の奥行きがさらに広がる設計も見事だ。 そして何より印象的なのが、メニュー全体に漂う“気楽さ”と“遊び心”。「カレー焼きそば」や「チキンライス」など、どこか懐かしく、それでいて妙に惹かれるラインナップが並ぶ。ラーメンで築いた技術と知見を、ジャンルを越えて再構築する姿勢。そのどれもが自然体で、気負いがない。 『キッチン きらく』という名前は、単なる語感ではなく、きっとこの店のあり方そのものを表しているのだろう。構えずに入れるけれど、料理はきっちりおいしい。次は何を食べようか──そんな期待とともに、また階段を上がりたくなる店。ご馳走様でした。 — キッチン きらく080-7293-0731東京都千代田区神田神保町1-5 M2神保町 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13279974/