2025.05.05 夜 リッツ・カールトンの、贅沢な景色と料理。@タワーズ ホテル・旅館 六本木・麻布・広尾 10000円〜29999円 ★★★★☆ 東京ミッドタウンの上層階。リッツ・カールトン東京のメインダイニング『TOWERS』は、夜景とともに過ごす特別な時間を提供してくれる。窓の向こうに広がるのは都心のビル群の灯り。控えめながら上質な空間演出が、非日常のひとときを静かに支えている。 この日は4品のプリフィクスコースに、「トリュフクリームのスパゲティ」を一皿追加。全体を通して感じたのは、しっかりとした味の輪郭と、満足感のある構成。王道をなぞりながらも、随所に個性をにじませる展開だ。 スタートは「富士山サーモンのタルタル」。サーモンはとろりとした舌触りで、噛むごとに脂の甘みがじんわりと広がる。そこに甲殻類を思わせるような複層的な旨味が重なり、やさしい味のレイヤーを形成。サフランのジュレとすだちの酸味が軽やかなアクセントになり、全体に程よい緊張感を加えている。 続く「北あかりのクリーミースープ」は、まさにその名に違わぬ“クリーミー”さ。蟹のエスプーマがふわりと覆い、口に含めば優しい甘みと海の香りが立ちのぼる。中に潜むバイ貝やずわい蟹の食感も楽しく、テクスチャーの緩急が丁寧に設計されている。 驚かされたのは、途中で提供される自家製パンの存在感。表面はパリッと香ばしく、中はもっちりとした弾力。噛み締めるごとに小麦の風味が膨らみ、バターをつけずとも十分な味の深さがある。温かくサーブされるのも好印象だ。 追加でいただいた「トリュフクリームのスパゲティ」は、グアンチャーレの塩気とパルメザンのコクが主軸。温泉卵のまろやかさと黒胡椒のパンチが寄り添い、バランス良くまとまっている。ポーションは小ぶりだが、風味はしっかりと主張するアグレッシブな一皿。 メインの「国産牛腹肉 赤ワイン煮込み」は、王道的な煮込み料理に現代的な軽やかさを持たせた印象。しっとりと煮込まれた肉は舌の上でほぐれ、マッシュポテトの甘みとごぼうの香ばしさが寄り添う。モリーユ茸の土っぽい風味も、赤ワインソースの酸味とともに引き締め役を果たす。 デザートは「グレープフルーツのスノータルト」。軽やかなフロマージュブランのムースに、マシュマロ状の小さなメレンゲを散らした愛らしい見た目。グレープフルーツの酸味とほろ苦さが後口を爽やかに整える。 夜景と料理、空間とサービス。すべてがリッツ・カールトンという舞台の上で調和し、記憶に残る時間をつくりあげる。料理はクラシカルな型を守りながらも、それだけでは終わらない魅力がある。特別な一夜を、きちんと特別なものにしてくれるレストランです。ご馳走様でした。 — タワーズ03-6434-8711東京都港区赤坂9-7-1 東京ミッドタウン ザ・リッツ・カールトン東京 45Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13187164/