世界中のレストランを対象にした食のコンペティション、世界のベストレストラン50。
ミシュランやゴエミヨなど世界的なアワードはいくつかあるが、飲食店従事者(特にファインダイニングのシェフ)達にとっては最も権威のある賞の1つになっております。正確な定義は知らないが、ただ”美味しい”だけではこの賞は獲得できない。社会、文化、歴史、哲学、などそこにはストーリーが求められる。ただの食事を超えた、総合的な食体験が評価のポイントになっている。と、ミトミえもんは思っている。
2022年、同アワードでトップ50入りを果たしたレストランがある。
大阪にある本町にある『Restaurant La Cime(ラシーム)』。シェフの高田裕介氏は、国内外のフレンチやイタリアンで研鑽を重ね、2010年にラシームを創業させている。ちなみに、同アワードに初登場したのは2018年のこと。ただし、アジア版での順位で17位。2019年に世界で93位、2021年に世界で76位、そして2022年に41位を獲得。ちなみに、アジアでは6位というポジションを獲得している。着実に上がっていく順位は、同時にシェフの研鑽量と比例しているのでしょう。
それでは、高田シェフが描く、料理に込められた哲学を見ていきましょう。
シェフの精神は「稽古照今」にある。温故知新と似たような意味で、古きを稽えて現在の事象に照らし合わせるという意味。”故ねる”だけでなく”稽えて”、”知る”だけでなく”照らし合わせる”、温故知新よりも深い精神性を感じさせます。
その象徴ともいえる料理がスペシャリテの「ブーダンドッグ」だ。フレンチの伝統料理でもあるブーダンノワールを、スタイリッシュな真っ黒なホットドッグに仕上げる。竹炭の生地を使ったそのビジュアルは洗練され、中の温度は心をほっこりとさせる。温度を料理に持ち込むのは、フレンチにはない試みだ。
もう1つの特徴は食材の方向性。決して高級食材などに頼らず、クリエーションによって満足感を作らせます。特に、シェフの出身地である奄美大島のエッセンスが込められます。まるで、シェフの個人の人間性までもコースに組み込んだかのように。また、大阪らしい遊び心もあり、最後のデザートでビリケンさんが登場した時にはついつい足の裏を触ってしまった。笑 最後に「La Cime」の意味をご紹介しておきましょう。頂上という意味なのだが、ベスト50の頂上に立つ、つまり「La Cime」が「La Cime」になる日を楽しみしています。
その他の料理のラインナップはこちら。
「マッシュルーム ヴァリエーション」
木の子のタルト、キノコのフラン、木の子のペースト、木の子のチップ、木の子の様々な表情を見せてくれる料理達。手前のタルトだけでも、ポルチーニをソテーし、フレッシュマッシュを重ねている。これだけの料理方法の種類はフレンチの奥深さを紹介することにつながります。フランでは7種類の木の子から作ったソースを加えるが、これが一番のお気に入りだ。
「ハーブサラダ クレソン トマト 牡蠣」
なんて清涼感一色のサラダでしょう。ハーブの風味に、トマトのエキスの酸味、クレソンのソース、そのどれもが清涼感につながります。木の子も保険にしており、牡蠣と合わせて、旨味成分をたっぷり配置しております。なんと満足感の高いサラダか。
「カボチャ 柿 金木犀」
ローストしたカボチャと柿。発酵金木犀も含めて、いろんな酸味を重ねているのが面白い。デザートのニュアンスを感じるが、やはりペアリングにはデザートワインを登場させます。
「青パパイヤ 松茸 氷魚」
生地にパパイヤとか氷魚がいるが、完全にチヂミのイメージ。椎茸のスライスを重ねていて、ソースには別皿でいしる(魚醤)を用意。塩気はそのままでも十分だが、味の変化が面白い。
「赤万願寺唐辛子 カツオ 山羊」
たっぷりのチコリの下に鰹。鰹には奄美大島のグァバソーツに発酵唐辛子を和えたソースを。このソースが抜群で、発酵の酸味、辛味、苦味などを一体にした一品。もう1つはピタサンドで、山羊のスパイス煮込みを挟みます。奄美大島では給食で同様のメニューが出たそうですが、まさかファインダイニングに昇華されるなんて、給食のおばちゃん達も驚きでしょう。笑
「海老芋 グラニースミス セロリ ボタン海老」
海老の共演。ボタン海老と海老芋のセビーチェ。
「ツルムラサキ アワビ ラヴィオリ」
ツルムラサキの下にアワビとラヴィオリ。肝のソースで。
「菊菜 柚子 ノドグロ」
ノドグロの一夜干し。こんなルックスのノドグロ、いやフレンチで食したことまで初めてかも。脂の強い魚だが、柚子のソースで上手にバランスをとっております。
「北海道えりも短角牛 縮みほうれん草」
赤身の牛肉の上にトリュフが見えるが、この間に鰻を隠します。こんな隠し味も見たことがない。縮みほうれん草には中身に、同じほうれん草のムースを入れる。これだけも主役になりそうな一品だ。
「カブ ミキ」
ミキとは奄美大島の健康ドリンク。これとカブのアイスを重ねたもの。
「イチゴ 菜の花」
またまた素敵なビジュアル。周りのチップもソースも100パーセント苺だ。
「小菓子」
最後は遊び心満載。ビリケンさんのゼリー、大阪発祥のミックスジュースのぼんぼん、そして金柑のコンポート。
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La Cime
06-6222-2010
大阪府大阪市中央区瓦町3-2-15 瓦町ウサミビル 1F
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270106/27049485/