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2025.07.12 昼

江戸前の骨格と九州の恵み@鮨仙八

寿司

福岡市

10000円〜29999円

★★★★☆

熊本で名を馳せ、ミシュラン二つ星を獲得した『鮨仙八』が、福岡に舞台を移した。大将は西麻布「鮨真」で修業を積み、江戸前の技を軸に九州の恵みを巧みに織り込む。

その哲学は、移転後も揺るがない。ランチは握り一本勝負。余計な装飾を排した潔い構成で、テンポよく繰り出される一貫に職人の呼吸が宿る。赤酢を効かせたシャリが骨格をつくり、酸と旨味が交錯するリズムは、自然と盃を呼ぶ。全体に、お酒にアジャストしたような味わいが特徴的で、握りと酒が響き合う構成になっている。

幕開けは青梅鯛。澄んだ旨味が口に広がり、赤酢の酸がその輪郭を整える。

続く「琵琶鱒」には玉葱醤油の香りがふわりと重なり、甘やかさと奥行きを生む。

「水烏賊」は、細かな包丁で柔らかさを引き出し、噛み込んだ瞬間にねっとりと舌を絡める。

「連子鯛」は清らかな旨味を静かに響かせ、そこから青魚の強い流れへと移る。

「小鯵」は葱と大葉、生姜の香りが鮮やかに立ち、

「鰯」は熟成を思わせるコクで舌の奥に深い余韻を刻む。

さらに「真蛸」の吸盤が生む力強さ、

「赤貝」の瑞々しい歯切れが加わり、海の息吹を鮮やかに伝えてくる。

その中で、最も記憶に残ったのは「赤雲丹」だ。濃密でありながら、驚くほど柔らかな甘みを宿し、舌の上で静かに溶けていく。握りの連なりの中で、ひときわ鮮やかな光を放った存在である。

そして、ここで流れを揺さぶる一撃――「とこぶしのリゾット」。熊本時代から受け継がれるスペシャリテだ。肝を溶かし込んだシャリは、濃厚で奥深いコクを湛え、寿司の概念を一瞬で飛び越える。口中を支配する豊潤な味わいに、らっきょうの清涼感を添えて、再び鮨の世界へと引き戻す。この振り幅こそが、仙八の真骨頂だろう。

最後は玉子で柔らかく幕を閉じ、物語は穏やかな余韻を残して終わる。総じて、江戸前の骨格を守りながら、九州の恵みと独自のスペシャリテを織り込む。テンポよく繰り出される握りの中に、赤雲丹の鮮烈さと、とこぶしの衝撃という二つの記憶が刻まれる。ご馳走様でした。

鮨仙八
050-5590-6683
福岡県福岡市中央区高砂2-19-4 MGH高砂 1F
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40065474/

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