地産の食材にとどまらず文化や景色まで、故郷そのものを料理している。
大分県の別府温泉の山あいに暖簾を掲げる日本料理店『日本料理 別府 廣門』の印象だ。大将はの廣門泰三氏は、日本料理や蕎麦の名店を渡り歩き、故郷の別府で2021年に独立を果たしております。
料理の多くを大分県を中心とした九州の素材に頼り、ここでしか食べられない料理を心掛ける。そのアプローチそのものに修行先のエッセンスも含まれ、彼自身が20年にも及ぶ修行期間をいかに真摯に料理と向き合っていたのか伝わってまいります。
その象徴がこの八寸でしょう。大きなお皿の中でストーリーを描くのは、彼が修行した銀座しのはらのお家芸だが、これを廣門流のアイデアで見事に別府の景色を描き出す。
まるで温泉が湧き出るように湯気が立ち込め、更には血の池地獄が再現されるなど、故郷の姿を1つの器の中にぎゅっと閉じ込めておりました。素敵。
ちなみに、内容は以下。もはや八寸の器に収まりきらず、次々にお皿が到着してまいります。笑
鮪大根 春菊黄柚子、金時人参茶碗蒸し、みさお大豆煮、ほうれん草白和え 蕪酢漬け、干し椎茸煮、干し柿、タコ煮、ちりめん山椒真薯、サツマイモ団子、金柑茶巾、シカハム、サワラ酢締め、ビーツ、セロリもろみ味噌和え。別府の豊かさを表現するかのように魅力的な料理が並びます。
「タナカレンコン天ぷら」
「太閤牛蒡天ぷら」
「コウイカ天ぷら」
「里芋唐揚げ」
「ほうれん草軸」
「鯛腹焼き」
「焼き蕪」
冒頭でも触れたように九州の素材へのこだわりも強い。生産者の説明となると大将の言葉にも熱が帯びてまいります。コースの最初で、車海老、
真鯛、
コウイカ
が目の前に登場するが、その圧倒的な存在感に驚かされます。そして、最も印象的だったのが、佐賀県のささき農園のお話。根菜を得意とする生産者だそうで、シンプルなお椀などでそのポテンシャルの高さでも驚かせてくれました。
そんな素材で作られたコースのラインナップをご覧ください。
「蕎麦茶」
「先」海老芋の白味噌仕立て。海老芋の柔らかい甘味と旨味よ。
「替」さっと湯引いた天然車海老。ぶつ切りにする狙いはぶりんとした食感でしょう。海老味噌と甲羅で作った煮凝りで海老の濃度を高めます。
「椀」中央には蕪。周囲には根菜の葉を中心とした青菜の刻み。丁寧にひいた出汁と蕪のコラボレーションが圧巻。野菜だけのお椀でこれだけの満足感を作るとは。
「造」コウイカ。産地だからこその新鮮さでいかった食感が特徴。その中でも丁寧に包丁を入れて、食感のコントラストを作ります。
「造」天然真鯛。1つは肝醤油で。1つは酢橘や塩で食べさせるが、大分ならではのアウトプット。
「造」真鯛の腹の方。脂をしっかり感じさせる上に、炙りの印象がインパクトのある味わいに。
「凌」飯蒸し。赤なまこ、このわた、このこ、自然薯。なんですか、この日本酒オールスターズみたいな食べ物は。笑
「焼」大分産の天然の鴨。どんぐりを食べて育ったんだとか。イベリコ豚みたいですね。心臓、肝、砂ずりなどで作ったソースも尋常じゃなく美味い。鴨で鴨を食う。
「鍋」鯛の酒蒸しと蕪吹雪仕立て。やはり蕪の甘味が素晴らしい。鯛のあらでとった出汁の旨味を1つ1つに吸着させて、口の中に届いてきます。
「飯」冬の大分らしく最後を飾るのは河豚の食事。炙りと蒸しを重ねて、その出汁までもおかずにしてご飯を食べさせます。
「蕎麦」蕎麦名人の高橋氏仕込みの蕎麦。つけ汁の出汁感はさすが日本料理のプロ。蕎麦も出汁も彼のキャリアだからこそ提供できる蕎麦でございます。
「水」水菓子は苺と柿。
「菓子」自然薯と白小豆の金団。
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日本料理 別府 廣門
050-3647-3123
大分県別府市堀田4-2
https://tabelog.com/oita/A4402/A440202/44012162/