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2016.10.15 夜

最高に楽しく、最高に美味しい鮨。@初音鮨

寿司

大井・蒲田

50000円〜

★★★★★

テンポのいい江戸ッ子なまりの話口調はまるで漫談のよう。カウンターの向こうが高座に見えてくるほど、『初音鮨』を仕切る中治大将の寿司は面白い。この瞬間しか聞くことのできない舞台のはじまりはじまり。もちろん瞬間を楽しませてくれるのは会話だけではない。魚の「旬」も1つだし、冷凍庫を置かないという強い「意志」もその1つだ。

さっそく登場した大間の190kg。まだ脂がのる時期ではないというが、大迫力の大間だ。赤身はづけ、中トロはそのまま、大トロはづけの炙りとバリエーションで提供。非常に楽しみな提案であるが、マグロが登場するのはもう少し後のこと。まずは鮪を前に記念撮影だ。酒を飲む前の記念撮影は初めてです。笑

シャリは炊きたて。着席の時間に合わせてシャリを作る。赤酢の色がほんのりついた塩だけの状態。落ち着いてくるとネタの旨味を引き出すそうだ。シャリを見せてくれるのは初めての経験。

つまみはない。全て握りの18種で構成される。

最初は「烏賊」の王様ともよばれるダルマイカ。最高級の佐賀県呼子産だ。包丁を回数を忘れるほど細かくいれる。表面積をひろげて身の甘さを引き出すのが狙いだ。甘味のためには他の仕掛けもある。塩すだちを利用するのもそう、皿を温めてイカとシャリの温度を近づけるのもそう。確かにアイスクリームもキンキンに冷えたものには甘さを感じない。

噛まずに五秒が初音鮨のルール。本能ですぐに噛んでしまうが、この戦いが唾液を誘発する。うん、イカの甘さが口に広がります。

「鰆」。魚へんに春と書くが旬は寒くなってから。活け締め、神経じめの鰆は苦味などとは無縁。塩で水気をあらって酢でしめる。〆鰆の完成だ。山形の庄内おばこサワラ。二週間寝かせて旨味が凝縮された鰆の脂を同じく熱い器で抽出していく。口に入れて五秒、今度は熟成香が抜けていく。まるで生ハムのようだ。

大分から「赤貝」。器も赤貝なんですって!話の面白さや演出が強調されがちだが、ネタやシャリに器までそのこだわりは強い。上身だけだと一本調子になりやすところヒモを入れて香りをつける。

一塩して二晩寝かせた「カワハギ」。カワハギといえば肝がついてこないと!贅沢な量の肝から感じる甘さがたまらない。これだけの肝を食べたのは初めてかもしれない。これぞ、きもちいい食べ方です。笑

うひゃー!ここでとんでもない鰻が登場。秋田産の天然鰻。1.5キロ以上という化け物級だ。見たことないレベルの厚みだ。直焼きされた身にいれる包丁の音が違います。シャリも比例して立派な体躯です。二つにきられた身を醤油と山葵でいただきます。

長いものシリーズ!今度は「鱧」の出番。活け締め、神経締めの証明はその生体反応を見ればよい。切り身になってなお動き出す姿はもはや北斗の拳の世界観だ。鱧の生命力には脱帽です。淡路島由良の鱧の大きさを見てると落ち鱧なんて言葉は使ってはいけません。湯だと旨味が逃げちゃうので白焼き。お鮨屋らしい選択です。

鱧はお友達を連れてきます。友達の名前はずばり「松茸」。包丁をいれるとまるで少し反発するかのように音を立てる。これは口の中でどう作用するのか想像に難くない。きっと旨味が飛び出てくるのだろう。香りがカウンター内に充満する。蒸し焼きにした鱧と松茸のエキス。贅沢すぎるエキスでつゆだくにします。マツタケエキスのリゾットに鱧を合わせたようなもの。歯から音が聞こえそうなほどの食感はいつまでも余韻を残してくれます。

これを寿司と呼んでいいのでしょうか?ハモの骨と松茸でとった出汁のスープが箸休め。鱧と松茸のコンビは敵なしですね。まるで翼くんと岬くんを見てるようです。

ここで冒頭の鮪が登場。こんな短時間で赤身のづけが完成するのですね。鮪は常に泳いでるので筋肉量が多い。止まると窒息するのだとか。醤油の温度を28度に設定、これは鮪の体温と一緒。これだけの鮪自体から香がたつのはストレスがないから。「中トロ」は塩で。適切な温度管理のもとで準備された中トロも口どけがよく、シャリを忘れるほどの存在感。切りつけ方も豪快だし。笑

まだまだ四番バッターは続く。お次は伊勢海老の出番だ。大将の前ではもう可愛くさえ見えてきます。海老ちゃんに日本酒をがんがん飲ませる。一種のパワハラです。この後に温泉に直行するのだから人間なら完全に事件ですね。ちなみに、この日本酒も無駄にしない。伊勢海老の飲んだ日本酒がまた絶品なんです。日焼けした伊勢海老ちゃん。味噌の風味が全体の方向性を決定づけ、ほのかに火の入った身が素晴らしい食感を作る。生まれてきてくれてありがとう。

お次はイクラの出番だ。ハート型にかたどられたイクラをもつご夫婦の仲の良さが伝わりますね。二人の愛の結晶は日本酒との相性が抜群だ。一時期の巨人軍もびっくりでしょう。まだいましたよ、すごいのが!

なんと白トリュフの登場。香がカウンター中に充満していきます。お相手は白子。少し熱が入れられて甘みが引き出されたのか口に入れた瞬間に旨味が広がる。白トリュフに白子そした白い米、ここは雪原のホワイトアウトか乾期のウユニ塩湖か。頭の中も真っ白になる絶品だ。

おっと覚えてましたか?まだ大トロいただいてませんでしたね。しかも、づけの炙りという珍しい手法での提供です。これは五秒ルールを思い出させます。今度は自主的に口に滞在させる。タレとマグロの脂が焦げた香をずっと閉じ込めていたいです。まるでローストビーフを食べているよう。

半熟に焼いた雲丹を挟んで、鮪達の再登場です。まるでパントーンのように並べられた赤色は三者三様で、最後の手巻きのための準備だったのかと驚かざるをえません。これだけのネタを包むためとはいえシャリの使い方も豪快。手巻きというより太巻きの顔立ち。三重奏のハーモニーが口の中で一つの曲になる!美味すぎて悶絶!

最後は芝海老の玉子焼きで終了。ちなみに全て手渡しで提供される初音鮨。手と手っていいですよね。ここに強い信頼が伴いますからね。もともと屋台から始まったことの流れをくんでいるのだとか。大森海岸近くという立地の影響で道路は凸凹だったそう。手渡しでないと落とす危険があったとか。今年で創業123年目、手と手でつながるコミュニケーションはこれからも続いていく。

初音鮨
03-3731-2403
東京都大田区西蒲田5-20-2
https://tabelog.com/tokyo/A1315/A131503/13017742/

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