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2025.06.15 昼

地元と向き合い、風土を料理に変えるレストラン@MAISON LAFITE

フレンチ

太宰府・宗像・糟屋郡

30000円〜49999円

★★★★☆

大きく開けた窓の向こうに、那珂川の緑が揺れる。静かに流れる時間と、自然の息遣いに包まれたダイニング。それが『MAISON LAFITE(メゾンラフィット)』の舞台だ。景色と料理が溶け合い、皿の上にもテロワールが息づく。ここでは、九州の旬が最も美しく響く“かたち”で、そっと差し出される。

アミューズは、鹿児島の「高海老」を使った一皿。繊維質を残したスパゲティ仕立て。見た目はパスタのようだが、口にすれば“ぶりん”と跳ねる独特の弾力が心地よい。天草産の紫雲丹と日南のキャビアが頂に鎮座することで、まるで主役を讃えるような構成に。さっそく九州の海の豊かさを一口に凝縮したような構成で、店が目指すベクトルを見せてくれる。

冷菜には、地鶏を使った前菜仕立て。鶏の胸肉は生ハムに仕立てられ、もも肉は炭火焼きで香ばしさを添える。香りと旨味の対比が明確で、それぞれの部位の個性が引き立つ仕上がりだ。ここに地元産のアスパラが加わり、糸島産の熟成チーズを使ったオランデーズソースが寄り添う濃厚さと爽やかさが交錯し、地元食材の力をまっすぐに感じさせる。

じゃがいもの冷製クリームに蛤を合わせた冷菜。なめらかなクリームの中に、蛤の身がそのまま寄り添い、しっとりとした食感とふくよかな旨味が広がる。レモンとバジルの香りが全体を爽やかにまとめ、上にはエルダーフラワーが軽やかに舞う。ポテトチップ風のトッピングが、滑らかな口当たりに楽しいコントラストを添える。

福岡・姪浜の鱚のフリット。ふわりと揚がった身は軽やかで香ばしく、そこに合わせるのはよもぎとベルモットの香りを纏わせたソース。ほのかな苦味とハーブの清涼感が、鱚の淡白な旨味を引き立てる。添えられた向日葵、蒲公英、などの若葉が、春の野原を思わせるような生命感を皿に与えていた。

パンとバターも、静かな感動の時間。那珂川の地下水で焼き上げた高加水パンは、しっとり、もっちり。

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そこに糸島の海藻塩と自家製のフレッシュバター。パンだけで素材の物語が完結するような余韻。

地元産の蛸を主役に据えた温菜。しっとりとやわらかく火入れされた蛸に、爽やかな酸味のフロマージュブランが寄り添う構成。トマトのソースが全体をやさしく包み込み、明るく豊かな味の広がりを演出する。口に含むたび、素材の素直な旨味がふわりと広がる一皿。

艶めくアオリイカの身に、カリフラワーのクリームを重ね、八朔の仄かな苦味と酸が奥行きを添える。仕上げには温かな蛤のソースを回しかけることで、冷たい構成の中にやわらかな温度差と、貝の旨味がふわりと立ち上がる仕掛け。上にはケールやハーブの新芽が繊細にあしらわれ、目にも鮮やかな装いに。

メゾンラフィットの定番ともいえるフラン。地元で捕れた猪を、焼きあご、地鶏、猪の三種を合わせたコンソメで煮込み、その下に新玉ねぎのフランが潜む。スプーンを入れると、柔らかな玉ねぎの甘みがとろりと溶け出し、力強い出汁の旨味と交わって口中に深い余韻を残す。香ばしい猪肉は繊維感を残した絶妙な火入れで、噛むたびに味が広がる。

国東産の太刀魚のムニエル。香ばしく焦がしたバターの香りをまとい、身はしっとりとした火入れ。ふわりとほどける太刀魚の身質に、甲殻類の出汁とシャンピニオンの濃厚なソースが深みを与える。

メインディッシュは、大分が誇るブランド牛「豊の香クイーンビーフ」のロースト。長期肥育によってしなやかで上質な赤身に仕上げられる。しっとりとした火入れにより、噛むたびに肉の滋味がじわりとにじみ出る。ソースは赤ワインとマスタードで構成され、力強い肉の味にしっとりと寄り添う仕立て。添えられた地元野菜のグリルは、素朴でありながら確かな甘みと香ばしさを放ち、皿全体に土地の息吹を感じさせる。

食後に登場するのは、郷愁をスッと突いてくる「西瓜のデセール」。丸く成形された「西瓜のシャーベット」が、窓の向こうに広がる田園風景と共鳴し、縁側で頬張った夏の記憶が蘇る。甘さも瑞々しさも控えめに、情景ごと溶けていくような一品だ。

デセールは、この土地の空気感をそのまま閉じ込めたような一皿。呼子の甘夏と目の前に広がる油山の牧場でとれたミルク。そして「ソーヴィニヨン・ブランのジュレ」を合わせた一皿。

最後はプティフール三種。黒糖わらび餅、よもぎのフィナンシェ、文旦など、どれも小さな自然のかけらのようで、ひとつひとつが余韻を丁寧に繋いでくれる。

『MAISON LAFITE』は、ただ“地元食材を使う”という一言では収まらない。その素材が持つ力を、最も清らかに、そして最も美しく届けること。その一点に集中した美学がある。皿ごとの完成度もさることながら、料理と景色が交差するこの体験そのものが、この土地ならではの贈り物だ。ご馳走様でした。

MAISON LAFITE
092-953-2161
福岡県那珂川市西畑941
https://tabelog.com/fukuoka/A4003/A400301/40023784/

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