料理人はアーティストである。今回紹介するアーティストは早乙女哲哉氏。笑顔を見せず黙々と天婦羅をあげる。一瞬のタイミングを見逃さない鋭い眼光。まさに日本の職人の見本のような男だ。
店は門前仲町の駅から少し離れた住宅街。威厳のある店構えに加えて美術的な嗜好の強さを感じる。。少しの緊張感が走る。2階と3階にも店舗スペースがあるようだが、運よく1階のカウンター席へ。やはり天ぷらはカウンターが基本です。

メニューはおまかせのみ。「みかわの流れ」という品書きが個々の卓上に置かれる。恒常的なメニューに加えて、季節ごとの食材が追加されるようだ。春はしらうお、夏はぎんぽう、秋は松茸、冬は菊子。
車海老×2、車海老の頭、きす、烏賊×2、海老真薯の椀、稚鮎×2、うに大葉巻き、めごち、穴子、アスパラ、椎茸、小柱のかき揚げ。最後は天丼と赤出汁で〆ます。すごい量でしょ。
1つのめの芸術作品は「車海老」芯がレアな仕上がりで天ぷらとしては新しい食感。素材の旨味を抜群に感じることができる一品。

頭も同様で甘味を感じる程。

その他「きす」のホクホク感、「いか」のさっくり感も使い古された言葉ですが、双方を強く感じる。

天ぷらのエッセンスとしては非常に重要ですね。

続く「海老真薯」。これも絶品。季節の順才と海老も含めた出汁が優しく序盤の油を吹き飛ばします。気を取り直して、続きをいただきましょう。

「谷中生姜」「うに大葉巻き」。このあたりからは見た目の芸術性もうかがえます。谷中生姜の先だけを高温の油にひたして揚げた一品。その姿は職人そのもの。

うにも丁寧に大葉に巻かれ、その風味が天ぷらの中身に閉じ込められる。噛んだ瞬間に風味がぶちまけられる。うまい。

「めごち」東京湾のめごち。天ぷらでは定番ですね。淡泊な白身にも関わらず甘い香りを発します。

そして、目的の1つでもあった作品。「穴子」の登場。上質な衣をまとった大ぶりの穴子を早乙女氏自ら各人の皿に乗せていく。カリとあがった天ぷらの真ん中を天ぷら箸で一刀両断。湯気とともに穴子のいい香りがカウンター中にひろがっていく。食感は本当にサクサク聞こえてくるほど心地いい。

野菜は選択する仕組み。「アスパラ」と「しいたけ」をお願いしてみる。

アスパラも車海老同様、頭の部分と茎の部分で味に変化を持たせる。これもまた芸術だ。

最後は「柱のかき揚げ丼」と「赤出汁」。さっぱりのタレ、食感のある貝柱、さっくりの揚げ具合。この天丼だけでも十分満足がいく一品。

メニューの役割を果たす「みかわの流れ」。食後に自ら筆を持ち車海老の絵とサインを書いてくれます。めちゃくちゃうまい。料理だけでなく絵画も得意だなんて才能豊かなアーティストですね。

よくよく見れば、天婦羅の上にあるダクト。金色に輝きくダクトのデザインは、イタリアのボルサリーノの帽子。外出するときのトレードマークなんだとか。この話を聞いたときに初めて笑顔を見せてくれました。
<メモ>
ちなみに、茅場町の『みかわ』は息子さん、六本木のほうは一番弟子のお店だそうです。
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みかわ 是山居
03-3643-8383
東京都江東区福住1-3-1
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131303/13090866/