2025.12.27 夜 思い出横丁、変わらぬ蕎麦。@かめや 新宿店 そば 新宿・代々木・大久保 〜999円 ★★★☆☆ 新宿・思い出横丁にある『かめや 新宿店』。1957年創業、戦後の闇市を起点とするこの横丁の変遷と、ほぼ同じ時間を生きてきた店だ。そば屋というより、新宿の生活動線の一部。ただ、早く、安く、腹を満たす。その一点に徹した結果として、ここに残っている。思い出横丁はいまやインバウンドで溢れ、写真を撮るために歩く人の比率が明らかに増えた場所になったが、この店はその光景が生まれるずっと前からここにある。いま目の前で起きている賑わいは、この店にとっては“環境が変わった”だけの話で、やっていること自体は何も変わっていない。 この日、迷わず選んだのは、元祖の名がつく「天玉そば」。この店の立ち位置も、思想も、全部が詰まっている一杯だ。甘めに振られた出汁がまず前に出て、そばはそれを受け止める器として機能する。輪郭はシャープではないが、その分、街に馴染む。玉ねぎを主体にしたかき揚げは、サクサクを誇示するタイプではない。出汁を吸い、油と甘味が溶け出したところからが本番で、衣は天ぷらであることをやめ、出汁の一部になる。いわば“二毛作”。揚げ物として一度成立し、溶けてからもう一度、食べ物として機能する構造だ。 『かめや 新宿店』は、特別な一杯を出す店ではない。だが、新宿という街で、思い出横丁という環境の中、空腹にどう応えるかという問いに、何十年も同じ答えを出し続けてきた。その事実が、いまの賑わいの中でもブレずに立っている理由だ。観光地になろうと、シャッターを切られようと、向いているのはカメラではなく腹。必要なときに、必要な味を、必要な速度で出す。その徹底が、この店を今日まで残してきたのだ。ご馳走様でした。 — かめや 新宿店03-3344-3820東京都新宿区西新宿1-2-10https://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13006720/