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2024.04.19 夜

第三章、開幕。最先端ではなく、そこには未来があった。@CAINOYA

京都市

30000円〜49999円

★★★★★

『CAINOYA (カイノヤ)』、第三章開幕。

鹿児島に「CAINOYA (カイノヤ)」が誕生したのは2005年のこと。ガストロバックを武器に、全国から食通が押し寄せるお店として話題に。

満を持して京都のホテル内のレストランへと移転を果たし、ミシュランを獲得するなど世界的な評価を獲得。そして、舞台を京都の右京区花園に変えて、第三章を迎えております。

閑静な住宅街に佇む一軒家レストランで、意志の強さを表現するような黒塀で迎えてくれます。

カウンターからは京都らしい庭を望むことができる落ち着いた古き良きな雰囲気なのだが、実はシェフの元にはいくつもの最先端のシステムが集まっている。いや、最先端というよりももはや未来と言ってもいい。

もともとガストロバックという減圧加熱の調理方法も未来的だったが、厨房施設はさらに進化。その1つが、熱源。一見すると作業台に見えるカウンターの中にIHが組み込まれている。

ただ、鍋や石を置いたようにしか見えないが、そこから湯気が立っているのです。脳がついついバグります。笑 

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特殊な冷凍技術、タッチパネルのコンベクションなども導入し、調理のオペレーションを向上。例えば、今回は20皿以上の料理のコースだったが、これをワンオペで実現することに大きく貢献しております。

さっそく、未来の技術と厨房で作ったコース内容をご覧にいれましょう。

「アスパラソバージュ」
山形産。河豚の出汁でポッシェ。花山椒のアクセントが効いているが、緑の料理を緑でアクセントをつけるのが美しい。

「ヴィシソワーズ」
バターののジェラートと胡椒の泡を重ねて。カイノヤ流のじゃがバターを完成。お酒のペアリングも芋焼酎だったりで、芋と芋のペアリングも秀逸。

「アスパラグリル」
これぞカイノヤの真骨頂、ガストロバックのアスパラガス。10年かけてとり続けたアスパラの出汁をアスパラに戻す。つまり、何本分ものアスパラの旨味が一本に詰まっているのだ。

「カイノヤの椀」
もちろんただの椀ではない。昆布やポルチーニの旨味、柑橘の酸味などを重ねたスープに、海と山の恵をラビオリに包む。前者は蛤、後者は仔羊が担当しとります。

「鰆」
これもガストロバックだからこそできるアウトプット。いわゆる西京焼き的なことなのだが、その食感は絶対に西京焼きでは実現できない。鰆の中に味噌自体をガストロバックしており、焦げ目の一切ないしっとりした西京焼きになっております。なんてこった。

「牛」
普通は積極的に活用しないとされる経産牛。低温調理でじっくりと火入れし、オーク樽の使わなくなった廃材を焼いて薫りを纏わせます。カイノヤの技術の前では、どんな食材も美味しく調理してしまうのか。

「八寸」
かつてミネラルウォーターをガストロバックして驚かせたクリスタルサラダは、昆布やレモンも加えてさらにパワーアップ。皿自体も進化し、野菜を20種以上も使った八寸仕立てに。野菜を食べさせるのに、調味料自体も野菜なのが面白い。

お椀や八寸など、第三章ではカイノヤの世界観に和の参加が目立ち始めたが、その象徴となるのが寿司でしょう。だが、個人的にはこれを単純な”寿司”と表現したくない。こ寿司と呼んでしまうと、創作寿司の1つと捉えられてしまいそうだからだ。だが、カイノヤの寿司は、寿司の文化を見事に踏襲しつつも、現代的に、いや未来的に表現したものである。

例えば、寿司の技術の1つに”寝かせる”という手法がある。ネタの旨味を引き出す伝統的な手法なのだが、カイノヤの技術の前では旨味を中に入れ込むことができるのだから、全く必要としない。ネタにみずみずしさが欲しければ、旨味のある水分を入れてしまえばいい。寿司に必要だった仕事を技術で追いつくどころか、凌駕してしまおうという試みなのだ。これは、江戸前も九州前でもない、未来のお寿司なのです。未来前?甲斐乃家前?ネーミングセンスがなくてすいません、、、笑

右から「平目」「鮪の漬け」「首折れ鯖」「海老のカリフォルニアロール仕立て」。まるで錦鯉のように表現された平目は美しく、平目の出汁と昆布の旨味をガストロバック。いわゆる昆布締めを実現しながら、平目自体もアップデートしたという訳です。鮪にはラルドを重ねたり、鯖には熟鮓的なエッセンスを加えたりと、ユニークなアプローチのネタが並びます。

「鰯」
鰯の出汁をガストロバック。シチリアの鰯の魚醤を合わせるのがお見事。鰯の香草パン粉焼きを寿司で表現したようなアウトプット。球体だからか、旨味がぐるぐると回ります。

「ソデイカ」
浅利のブロードと野菜出汁をガストロバック。

「白カジキの握り」「イクラの軍艦仕立て」
発酵をテーマにした二貫。

「鰹」
鰹のタタキの上位版。ニンニク、玉ねぎ、生姜をガストロバック。海苔も形もオシャレだが、前述の薬味たちを中に入れちゃってるもんだから、そのビジュアルが必然的にすっきりと洒落たものに。

「村沢牛」
牛タンの押し寿司。雲丹のソースで。

「雲丹」
いちご煮を表現したような一皿。何より驚くの雲丹のジューシーさ。おそらくガストロバックの前段がなければ、水分を補完していることなど気づかず、超絶新鮮な雲丹という印象を持つことでしょう。しかもこれ、一度冷凍をかけてると言うから驚きには2倍。やっぱ、未来だわぁ。

「穴子」
10年間も継ぎ足ししたと言う穴子の出汁をガストロバック。アスパラの時もそうだが、その出汁は使うたびに冷凍をかけているんだとか。その技術たるや、、、

「玉」
しっとりとしたカステラ。

寿司タイムを終えて、最後は蛍烏賊の米料理。そのアプローチはパエリアでもなく、炊き込みご飯でもありません。蛍烏賊が浅利の出汁でパンパンになっており、その旨味にきっと驚くことでしょう。お椀、八寸などに続いて、やはり和のエッセンスながら、全く違う未来的なアウトプットになっております。

「デセール」 ラッドオレンジ、カンパリ、ベルモットゼリー、オレンジのソルベのせ。

鹿児島は、西郷隆盛、大久保利通、東郷平八郎など維新の志士達の生誕の地。彼らが日本の未来の礎となったわけだが、カイノヤのシェフ塩澤という鹿児島出身の志士が今度は日本の料理界の未来の礎となるかもしれません。それほどまでに最先端の、いや未来を感じさせる料理とキッチンでございました。さぁ、カイノヤの新しい幕があがった。

CAINOYA
京都府京都市右京区花園土堂町17-3
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260402/26040164/

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