鰻屋が通う鰻屋が滋賀県の大津にある。
名前は『う嵐』、旧名の「う晴」で記憶している人も多いかもしれない。もはや”変態”とさえ称されるほど、鰻の知識に溢れ、深い理解と探究し続ける技術を持つ。食べ歩きなどには全く興味がないそうで、自分の鰻を深堀することにベクトルが向いている。
何一つ隠すことなくプレゼンテーションしてくれることもあって、これを勉強するために鰻屋が通うというのも頷けます。鰻愛に溢れる、大将の鰻をいただいてみましょう。
全国の鰻を使いこなすが、今回は2.5kgアップの宮崎産の鰻。味鰻と呼ばれるブランド鰻で、しっとりした肉質に上質な旨味を持っているそうだ。
まずは、白焼き。
焼き方はこう。くるくると鰻を巻き付け、頭の部分を上に向ける。薬缶の注ぎ口のようなイメージだが、ここから熱を逃していくのだとか。熱を逃すための串打ちや火入れなど、きっと職人達からしたら目から鱗なのでしょう。
その証拠となるのが口から出る舌の部分で、これが浮いてる状態が火入れがうまくいった証なんだとか。これを竜のさえずりと呼ぶそう。結果として、外はバリバリ、中はしっとりとした食感を実現し、香りの強さや脂の旨味を残すことにも繋がっているよう。
次に、肝焼き。
たれ焼きの選択肢もあるが、個人的には肝の香り焼きをオススメしたい。吟醸酒で焼いたそうで、甘さと香ばしさ同居。裂きたての鰻の肝は臭みなどとは一切無縁で、特に胃の接点のところなど甘ささえ感じられます。自身の旨味と山椒ががっちりと握手した一品は必食のメニュー。予約は必須なので気をつけて。
真打、己蒸し大名胡座。
大将が行き着いた集大成ともいうべき技術。普通の鰻店では、火入れの温度は60-70℃くらいらしい。ところが、唯一無二の技術を駆使すれば、鰻の臨界点である93℃まで上がるのだとか。
白焼きでは薬缶の注ぎ口を外に出したが、今度は注ぎ口を内側に向けます。なるほど、これが己蒸したる由縁か。自身を焼いた熱を自身に返していくのです。この温度はご飯でいう煮えばなにあたるそうで、蒲焼に変わる瞬間の温度なのだとか。
証拠にと、温度計にてその温度を確認させてくれる。この絵もフォトジェニックですね。笑 天然鰻などの厚みがあるものは持て余すことも多いが、この技術を持ってすれば外パリ、内はむちっと強い食感が手に入るそう。調理の難しい鰻を美味しくしたいと辿りついたそう。大将の前では、大物の鰻が大人しくなってしまうようです。ちなみに、大名とは包丁を入れないという意味。胡座とはその鰻が丸まっている姿をイメージしております。
彼の夢は人生最高の鰻を食べさせること。日本一の鰻屋になることは興味がない。鰻文化の始まった350年の中の”歴代”一位が目標と語ります。彼の鰻の道はこれからも続いていく、きっとさらなる進化を迎えるのでしょう。ご馳走様でした。
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う嵐
077-575-2379
滋賀県大津市浜大津3-3-2
https://tabelog.com/shiga/A2501/A250101/25004102/