本当に最近の寿司職人は若い。大好きな新富町「はしもと」、絶品の握りの「あらい」、一瞬で人気店となった「天本」、みなさん35歳にも満たないメンバー達だ。
彼らよりも若年にして一国一城の主になった『秦野よしき』氏。もともとは「道」という店で独立開業していたそうだが、このときはさらに驚きの20代だ。若さは時に新しいものを生み、時にハレーションを生みだす。
秦野氏の握る鮨はどんな鮨なのだろうか。秦野氏の鮨は「楽しい鮨」だ。オヤジばりのダジャレを多用する大将の面白さが目立つが、ネタからはユニークネスを感じる。
例えば、「鮑の霙寿司」。
赤酢と肝を混ぜたシャリもユニークなら、天ぷらとおろしをまぜたタレも面白い。
間で提供される棒鮨なんかも珍しい。その名も「能登のしめ鯖の棒鮨の昆布巻きの海苔巻き」。
「の」だらけで笑えます。味も昆布の旨みと酸味のバランスがとれております。
続くお茶漬けのまたユニーク。赤酢の酢飯の上に穴子とミョウガ。梅と昆布の出汁でお茶漬けにしてくれます。このラインナップはかなり珍しい。
ちなみに握りは、総じて柔らかいシャリ。存在感のある赤酢が特徴だ。通常のネタももちろん提供されるが、やはり他ではみないネタ作りを目指しているようだ。炙った「太刀魚」を握りにしたと思えば、「中とろ」の上にはオニオンが供される。
醤油を加えて酸化させたオニオンの強い酸味はもちろん寿司に合う。
得意のダジャレも発動。「アオリイカ」の名前はペレストロイカ。革命的なほどの柔らかさはバレバレの隠し包丁で。
煮浸しからヒントを得たという「茄子」も面白い。揚げたにもかかわらずさっぱりしているのは不思議だ。
そうそう彼は経歴も面白い。体育大学を卒業した元警察官。しかも目指していたのは、元々イタリアンを志していたそう。だが、最初に修行にはいった「銀座 寿司幸」でこの世界にのめり込んでいったそうだ。
そのニュアンスは、クリームチーズを練り込んだ「味噌漬け」やオリーブオイルで漬けた「岩牡蠣」などに表れる。
得意のダジャレの最後も同様だ。その名も「ガリエール」。
ガリはもちろん生姜なので、こいつはジンジャーエールということ。およそ寿司屋の料理ではありませんね。笑
実は特別コースで、イタリアンの色を濃くした「板リアン」のメニューも存在するよう。この方向性に批判的な意見もあるかもしれないが、こんな鮨があってもいい。もちろん次回は「板リアン」の予約をさせていただきました。
つまみ。
「豆腐の味噌漬け」クリームチーズを練りこむ
「シャコ」岡山県産。
「鮑の霙寿司」赤酢と肝を混ぜるたシャリと天ぷらとおろしをまぜたタレ。
「煮蛸」お茶のカテキンで8時間煮る。柔らかさだけでなく、お茶の風味付けも。一石二鳥。
「岩牡蠣」石川県能登産。低温調理。藁で燻して風味付け。オリーブオイルで三日漬けたそう。
「雲丹と白烏賊」三日かけた熟成。。ねっとりした白烏賊と新鮮な雲丹の組み合わせ。
「しめ鯖」能登のしめ鯖の棒鮨の昆布巻きの海苔巻き
「穴子のお茶漬け」赤酢の酢飯に梅と昆布の出汁のお茶漬け。
握り。
「中とろ」北海道噴火湾の中とろ
「関アジ」半身で贅沢な大きさにカット
「赤貝」三日寝かせて臭みをとる。
「車海老」芝海老のおぼろをのせる。カットも面白い。
「中とろ」オニオン。醤油を加えて酸化させたもの。
「アオリイカ」バレバレの隠し包丁で柔らかさを追求。
「赤身の漬け」二週間。柚子で香り漬け。
「茄子」煮浸しからヒント。揚げた茄子。
「ノドグロの漬け」脂が強いと握り、控えめだと握りでだすそう。
「小肌」おぼろで酸味を中和。
「雲丹」礼文
「穴子」甘めのつめ
「ガリエール」
「トロタクがっこ」燻製香が特徴的な巻物。
「玉子」
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鮓職人 秦野よしき
東京都港区六本木5-11-25 3F
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