『かぶと』もう丸の内線に乗る電車の中から、池袋を北上している道すがら笑みを消すのに努力が必要です。
小学校の頃、兄貴がうなぎが大好物だったのを思い出します。今度全力で自慢してやろう。そんなことを考えながら、お店に到着。古い日本家屋から鰻の匂いとともに、オーラまで放っているかのようです。
店内は4人テーブルとカウンターのみの造り。カウンターの一番端しか空いてませんでしたが、先客がご帰宅された後は、カウンターのど真ん中をいただき、大将の所作も楽しませていただきます。
座った途端の大将の言葉に一瞬で心を鷲掴みにされます。「料理は任せてくれ。まずかったらお金はいらねぇからよ。」「この旨さがわからないなら、帰ってくれ。」「お前らが普段食べてるのは鰻じゃなくて、クソだからよ」
この罵詈雑言の品評会は、すぐに愛情と自信に基づいたユーモアと気づかされます。自信の鰻をいただいてみましょう。
「えり(頭)焼き」関東風と関西風の2種をいただきます。前者は蒸したもの、後者は蒸さずに提供されます。関東風はフワフワで早速最高級の鰻を堪能と思ったのも束の間、これが店で一番クソな一品だとか。一方の関西風は、骨ばっていて歯ごたえや食感、旨味が全く異なります。特に焼きの香ばしい風味が口に広がるので、同じ素材と言われなければ気づかないでしょう。
「ひれ焼き」黒く焦げたひれ。中身のジューシューさを閉じ込めてます。
「心臓」これぞエンターテインメント。ドクドク動いている心臓を飲み込みます。味や食感を楽しむものではありません。かぶとの儀式と言っていいでしょう。ただ、色んな意味で元気にはなりそうです笑
「肝焼き」肝が苦いという定説を打ち破ります。捌いてからの提供スピードが肝だそうです。大将の捌きスピードはものの10秒。「肝が苦いなんて嘘。それは下手くそが作ってる」と一刀両断です。肝の色んな部分を楽しめて1本にドラマがあります。
「一口蒲焼き」ここはオシャレフレンチですか!?蒲焼を一本にまとめた洒落た一品。このあと待ち受ける、本番の鰻さんの期待が高まります。
「れば焼き」一片が一尾分とのこと。一体何匹分ですか、これは。塩焼きにも関わらず、臭みなど感じることなく口の中で甘味すら感じます。
「白焼き」えり焼き同様、かぶとは蒸さないのを是としているようで、ただシンプルに焼いただけの白焼き。食べ方もシンプルに何もつけずにいただきます。白焼きは山葵や醤油で食べることが多いですが、いかに損をしているかをご教授くださいます。
「蒲焼き」〆となるタレの蒲焼。ご飯や肝吸いも一緒にいただきます。厚みや食感は言うまでもなく、最高級と言える一品です。濃厚な味ですが、タレで補ってるのではなく、鰻そのものが味をしっかり発信してます。
実は鰻本来の味を理解させるべく山椒を禁止されておりましたが、やっとご許可いただきました笑この山椒も紀州産だそうで、柑橘類がうまいところの山椒がベストと教えてくれました。京都や岐阜じゃないですねー。
お酒は最初に焼酎いただいてましたが、一番合うのは日本酒と言われて急ぐ飲み干しました。その後は「くくみ酒」や「わたぼうし」等、大将が選び抜いた日本酒をいただきました。
レビューでも書き連ねた通り、鰻の知識が一旦すべて壊されます。実際の食材を使って、うなぎの美味しい食べ方を終始教育してくれます。そういう意味も多分に含まれてると思いますが、2回目以降の客でないと天然の鰻はいただけません。ちなみにこれが天然のうなぎ。
天然は見た目でわかる。黄金に輝き美しい。自然の食べ物を食べてできあがった色なんでしょうね。今まで食べていた鰻の常識を覆した『かぶと』の鰻。そのかぶとの鰻達の常識さえもぶち壊してくれました。風味のレベルが尋常じゃない。ミトミえもんの口レベルの器にはおさまりません!!
ちなみに大将は3月で勇退。あと何回食べることができるのだろうか?
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2回目の訪問
「鰻達のアンサンブル@かぶと」
https://blog.33inc.jp/2015/03/18/2-2/
3回目の訪問
「ついに実現!天然との食べ比べ!@かぶと」
https://blog.33inc.jp/2015/06/02/3-2/
4回目の訪問
「名物大将の焼く、最後の鰻。@かぶと」
https://blog.33inc.jp/2015/09/29/8707/
かぶと
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