2014年オープン。飯田橋駅直結・サクラテラス2階の『トラットリア グランボッカ』は、木目の温かさと高い天井がつくる開放感が心地よく、中央のオープンキッチンが空間にほどよい躍動感を添えている。系列の「タンタボッカ」と同じく肉を主役にしたイタリアンで、気負わず使えるのに、きちんと満足感をくれるタイプの店だ。

コースは「パンプキンスープ」から始まり、バターと生クリームの優しい厚み、そこにナツメグの香りがすっと立ち、自然体の導入。

「前菜盛り合わせ」は、サーモンの低温コンフィ、生ハムとシャインマスカット、ブラータとカラスミ、パテ・ド・カンパーニュ。味の方向性や温度、食感を軽くずらしながら、流れを滑らかにつくっていく。
中盤の「金目鯛」と「椎茸」のフリットは、ふっくらとした白身に椎茸の香ばしさと軽い衣が重なり、素直な組み合わせの良さがそのまま生きる一皿。

そして看板の「ローストビーフ」。厚切りで出してくる思い切りのよさがまず印象的で、噛んだ瞬間に肉の旨味がぐっと押し寄せる力強い味わい。その強さを受け止めるのが付け合わせの春菊だ。春菊自体に塩とライムで味をつけるというアプローチがユニークで、ほろ苦く爽やかな春菊が肉のパンチを和らげつつ、皿全体の輪郭をすっきり整えてくれる。付け合わせのセンスが光る。

「パスタ」は帆立と唐墨を使ったペペロンチーノ。皿の中央に軽く巻かれたスパゲッティの上から唐墨がふわりと散り、控えめながら品のある香りが立ち上がる。帆立は小ぶりにカットされ、プリッとした食感を残した火入れで、噛むほどにじんわりと甘みが滲む

そして、忘れちゃいけないのが、通しで供される名物「ポップオーバー」。焼き立ての膨らみはふわりと軽く、外側は薄く香ばしく、中は空洞を含んだエアリーな仕上がり。そのまま頬張ればバターの香りがふっと広がり、シンプルなのに妙に後を引く。添えられたバターを溶かしてつけても、メイプルシロップで軽い甘さを添えても成立し、食べ方を変えるたびに表情がふわっと変わる。気づけばもう一つ、と手が伸びる魔性のパンで、ローストビーフと並ぶこの店のもう一つの主役だ。

デザートは、チーズケーキとピスタチオアイスの組み合わせ。細身にカットされたチーズケーキは、生地がほろりと軽く、上に散らしたフランボワーズの酸味がクリームの柔らかな甘さをきゅっと引き締める。重たさがなく、口に入れるとすっと溶けるようなバランスだ。添えられたピスタチオアイスは淡い緑色で、ナッツの香ばしさとミルキーさが同居した上質な仕上がり。

2014年の開業以来、肉をしっかり味わわせるイタリアンとして、ローストビーフとポップオーバーを軸に安定した満足感を届ける一軒。飯田橋で気楽に、それでいてきちんと満たされたい日に、自然と思い浮かぶ店だ。ご馳走様でした。
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トラットリア グランボッカ
050-3101-4631
東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム サクラテラス 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13173167/