2025.11.14 昼 九品仏に漂う、パン職人のまっすぐな技@Comme’N TOKYO 本店 パン・サンドイッチ・ハンバーガー 東急沿線 1000円〜2999円 ★★★★☆ 九品仏の穏やかな街並みに、ふっと香ばしい風を流し込むように佇むベーカリーがある。『Comme’N TOKYO』。世界大会で栄冠をつかんだ大澤秀一シェフが2020年に構えた東京の拠点だ。屋号の由来は、フランス語の“Comme(〜のように)”と、師であるサ・マーシュ西川氏の頭文字“N”。パンづくりの志そのものを店名に刻むのもそうだが、何より“師匠の一文字を背負う”という選択に、大澤シェフの人間性がにじみ出る。技術より前に姿勢あり。 店に入れば、焼き立ての香りとともに、整然と積み上がるパンのラインナップが迎えてくれる。基礎と丁寧さで勝負するベーカリー。焼き色、層、気泡、どれも誠実な仕事そのもの。 主役は「クロワッサンA.O.P」。世界大会で優勝したレシピを踏襲し、やや高めの温度でしっかり発酵させた生地に、フランス産A.O.Pバターを折り込んでいく。焼き上がりは艶やかで凛とした姿。かじれば外はサクッと軽快に砕け、内側はしっとりとほどけていく。甘さの輪郭は柔らかく、きび糖の優しい甘味がバターと小麦の香りを引き立てる。 「生ハムとカマンベール」は、硬めのバゲットを堂々と使ったサンド。スペイン産生ハム、カマンベール、たっぷりのバターという構成だが、パン自体の香りと咀嚼感が土台となり、具材の良さがすっと引き立つ。バゲットがバキッと割れ、生ハムの塩気、チーズのミルク感、バターのコクが噛むたびに重なり合い、幸福感が押し寄せる。 「クロックムッシュ」は一口目からリッチな満足感が広がる。とろりと濃厚な自家製ベシャメル、表面に走る焼き目の香ばしさ、そして厚みのあるパンがどっしりと構えて全体を受け止める。焼き固まったチーズの端がまた嬉しいアクセントで、気づけばフォークが自然と前へ進んでいる。もはやパンという枠ではなく、一皿の料理として成立している。 総括すると、『Comme’N TOKYO』は技術の確かさがそのまま味の説得力になっているベーカリー。クロワッサンの層に宿る精度、生ハムサンドで感じるパンそのものの力強さ、クロックムッシュの完成度。どのパンにも大澤シェフの明確な意思が通っていて、選ぶたびにその輪郭が浮かび上がる。九品仏に来たなら一度立ち寄っておきたい、そんな理由のある一軒だ。ご馳走様でした。 — Comme’N TOKYO 本店東京都世田谷区奥沢7-18-5 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1317/A131715/13249511/