2025.10.22 夜 伊勢で研ぎ澄まされる江戸前。@こま田 寿司 伊勢・志摩・鳥羽 30000円〜49999円 ★★★★☆ 伊勢の古い町並みを歩くと、格子戸の向こうにぼんやりと灯る光。静けさを切り取ったようなその店構えに、思わず背筋が伸びる。 『こま田』 扉を開けた瞬間、空気が変わる。白木のカウンターが6席、磨かれた木目と包丁の音だけが響くその空間には、無駄なものが一切ない。店主・駒田権利氏は“あり輝の門下”として知られる職人。だが、その凄みは出自だけでは語れない。江戸前の技を継ぎながら、脂も酸も重ねすぎず、素材の持つクリアな味わいで勝負する。 最初に出るのは、握りの前の二皿。「蒸し鮑(茨城)」は、柔らかさの中にしっかりとした歯切れ。塩と肝の苦味が味を締め、香りがすっと抜ける。素材の持ち味だけで構成された一皿。 続く「漬け」はユニークな三つの角切り。厚みの中に漬け地の香りが薄く残り、噛むたびに赤身の鉄分が立ち上がる。握りへの流れをつくるための一手。 ここから鮨が始まる。こま田の握りは、見た目に派手さはないが、どれも輪郭がくっきりしている。赤酢の酸がやや強めに立ち、ネタの塩分と酸味を支えるように、米の粒がわずかにほぐれる。握りの圧は軽いが、空気の含ませ方が正確で、口に入れた瞬間に一体となる。全体を通して、脂を生かしながらも、食後の軽さが際立つ。 「赤身」仲買は石司より。 「剣先烏賊」 「大トロ」 「春子鯛」鹿児島より。 「鰆」 「鱚」 「アラ」神奈川より 「縞鯵」高知より。 「小肌」 「車海老」地元鳥羽より。 「紫雲丹」 「巻物」漬け鮪をたっぷり。 「干瓢」 「玉子」 力でねじ伏せず、温度と塩のコントロールで仕上げる。江戸前の仕事を徹底的に理解したうえで、いまの時代に合う軽さへと導く。食べ終えたあと、身体が驚くほど軽い。けれど、味の輪郭ははっきりと残る。握りの正確さ、温度の設計、会話の間。そのすべてが無理なく繋がり、店全体がひとつの呼吸で動いているのだ。ご馳走様です。 — こま田0596-28-7747三重県伊勢市河崎2-14-18https://tabelog.com/mie/A2403/A240301/24012212/