2025.10.10 夜 東京三大居酒屋。背筋が伸びて、心がゆるむ。@シンスケ 居酒屋・定食 上野・浅草・日暮里 5000円〜9999円 ★★★☆☆ 湯島の夜にひっそりと灯る暖簾、『シンスケ』。東京三大居酒屋のひとつとして語られる名店で、創業は1905年のこと。120年近い歴史をもつ老舗にして、いまも現役で息づく“居酒屋の原点”だ。「撮影NG」「マスク着用」の貼り紙に一瞬たじろぐ。でもそれは、頑固さではなく、空間と料理を守るための配慮。その証拠に、接客は思いのほか柔らかく、どこか温もりがある。そんな優しさが、老舗の空気をやわらかく包んでいる。 まずは「ポテトサラダ」。じゃがいもの甘みをベースに、厚切りベーコンの塩気と香ばしさがリズムを刻む。生姜のニュアンスが後味を引き締め、日本酒との相性を見事にチューニング。酒場の定番を磨き上げた、職人の手仕事が光る一品だ。 続いて「鯛のうすづくり」。美しく透ける身は、まるで湖面のような静けさ。しなやかな弾力のあとに、甘みがふわりと広がる。咀嚼するたびに旨味の層が重なり、日本酒がその余韻をやさしく抱きしめる。何も足さず、何も飾らず——この店の方向性が、その一枚から伝わる。 そして「いわしの岩石揚げ」。見た目は無骨だが、中はふっくらと軽やか。つみれのような柔らかさと、香ばしい衣のコントラストが心地よい。魚の旨味がぎゅっと凝縮され、噛むたびに滲み出す滋味がたまらない。正直、これだけでお酒が止まらなくなる。 「きつねラクレット」は、意外性のある一皿。焼き上げた油揚げにとろけるチーズ——和と洋が出会いながらも、決してぶつからない。そこに添えられた味噌が全体を包み込み、和の余韻をきちんと残してくれる。老舗の遊び心、ここにあり。 〆の「冷そうめん」は、実に静かな終幕。極細の麺が美しくほどけ、透き通った出汁がそのまま喉に流れ込む。ごまの香りと海苔の風味が重なり、心地よい余韻が続く。 『シンスケ』の魅力は、古さではなく、積み重ねた時間の中で生まれる自然な心地よさにある。どの料理も気取りがなく、するりと体に馴染む。格式や伝統を意識させることもなく、いつの間にか安心して飲んでいる自分がいる。湯島の街の片隅で、今も変わらず灯りをともす店。肩の力を抜いて飲めるのに、どこか背筋が伸びる。そんな空気を持つ居酒屋が、『シンスケ』だ。ご馳走様でした。 — シンスケ03-3832-0469東京都文京区湯島3-31-5 YUSHIMA3315ビル 1F・2Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1311/A131101/13003607/