2025.10.06 夜 笑い声が肴になる夜@城喜元 居酒屋・定食 銀座・新橋・有楽町 5000円〜9999円 ★★★☆☆ 新橋の夜を照らす一本の灯り、『城喜元』。2011年に暖簾を掲げて以来、この街の酔客たちを笑い声で包み込んできた。雑踏の中にひっそりと佇む立ち飲み屋だが、暖簾をくぐった瞬間、そこはもう別世界。カウンターの奥から飛んでくるのは、マスターのテンポのいいトークと豪快な笑い声。静けさとは無縁、けれど妙に落ち着く――そんな空間が広がっている。 この店の核は、料理でも酒でもない。マスターその人。よく喋り、よく笑い、そしてよく見ている。客の顔色を読むのが早く、気づけば隣の客とマスターの掛け合いに引き込まれている。話の合間に挟まれる人生訓や昔話が、意外と深い。立ち飲みとは本来こういう場所だ。誰かの声と笑いで、夜がゆるやかに転がっていく。 料理は、そんな空気にぴったり寄り添う。「刺身盛り合わせ」は正統派の顔をしながら、どこか人懐っこい味わい。脂ののった「鰤」、瑞々しい「鮪」、歯ごたえの良い「蛸」、そしてとろりとした「烏賊」。ネタの鮮度がしっかり立ち、飾らずとも芯がある。職人の手仕事というより、気取らないうまさがここにはある。 「くじらベーコン」は懐かしさの象徴。胡麻の香ばしさ、ポン酢の酸味、鯨の脂の甘みが一体になって、昭和の酒場を思い出させる。噛むほどに旨味が滲み、自然と酒が進む。マスターの語りを肴にすれば、もうそれだけで宴が完成だ。 「めんたい炒り卵」は、立ち飲みの真骨頂。明太子の塩気、卵のとろみ、黒胡椒の刺激。味は濃い、でもこの濃さこそが正義。仕事帰りの一杯を、力強く受け止めてくれる味だ。 『城喜元』は、料理や酒だけではない、人の熱”成り立つ店。マスターの一言が場をつなぎ、笑いが伝染し、知らない客同士が肩を並べて笑う。それがこの店の真骨頂。新橋の夜に、また一つ、心のよりどころを見つけた。ご馳走様でした。 — 城喜元03-3436-4617東京都港区新橋4-14-6 第二西欧ビル 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13122159/