恵比寿ガーデンプレイスに鎮座する『ガストロノミー ジョエル・ロブション』。まずはこの名前を聞いただけで背筋が伸びるだろう。ジョエル・ロブション――フランス料理史に燦然と輝く、世紀の料理人。生涯で30を超える星を手にした唯一無二の巨匠だ。彼が残したのは単なるレシピや技法ではなく、美食の哲学そのもの。その思想を正統に受け継ぎ、東京で最高の形に結晶させているのが、この恵比寿の館である。

この空間に一歩足を踏み入れれば、ただの食事では終わらないことがすぐにわかる。重厚なインテリア、静謐なサービス、磨き上げられた皿の数々。そこは、完全なる食の殿堂。クラシックを深く理解しながら革新を恐れず、完璧な火入れと調和で素材の本質を引き出す。さらに盛り付けの美学は緻密で、料理は芸術的でありながら、口にすればただ純粋に旨い。
さて、ここからはいよいよ料理の幕開け。
最初の一口は「ラングスティーヌのゴーフレット」。香ばしい生地の軽やかな食感の中に、ラングスティーヌ(赤座海老)の濃厚な旨味が閉じ込められている。アミューズでありながら、一撃で場の空気を支配する力強さ。

続いて登場するのはスペシャリテ「帝国キャビア 〜ジョエル・ロブションスタイル〜」。ソローニュ産のキャビアを冠に、ズワイ蟹と甲殻類のジュレ、そしてカリフラワーのクリームが幾層にも重なり合う。黒と白のコントラストは視覚的にも劇的で、一口に収めれば海の塩味と大地の滋味が融合する。これは単なる料理ではなく、ロブションが築き上げたアートだ。

冷菜の「金華鯖と茄子のタルトレット」は燻製香を纏った鯖に、バジルと茄子のピュレを合わせたもの。パリパリとしたタルト生地が食感のアクセントとなり、濃厚さを軽やかに引き上げる。横に添えられた紅心大根にはタルタルを忍ばせ、酸味と瑞々しさが全体を引き締める。

温菜は「ホタテとスペルト小麦のリゾット」。パルミジャーノのコク、鶏出汁の旨味が穀物に染み込み、ミキュイで仕上げたホタテを優しく抱き込む。皿の上には鮮やかな緑のハーブや紫の花穂紫蘇が散りばめられ、黄金色に輝くリゾットと調和して華やかな景色を描く。

魚料理は「キンキ」。脂の乗った身を繊細な火入れで仕上げ、茗荷や蓴菜を添えて和のニュアンスを漂わせる。特にネギのアクセントが印象的で、フレンチでありながら日本料理の清らかさを宿していた。

肉料理は「牛フィレ肉のソテー」。赤ワインソースにキャラメリゼしたエシャロット、人参のオペラを添える。堂々たるクラシックの世界観でありながら、遊び心も織り交ぜるあたりがロブション流。正確な火入れが肉の力を最大限に引き出していた。

そしてフィナーレを飾る「モンブラン」。栗のグラッセとコニャック香るソース、黒すぐりのソルベを重ね、繊細な飴細工を纏わせた造形美。甘美さと酸味の対比が口の中で踊り、最後の瞬間まで舞台を華やかに締めくくる。

パンのワゴンサービスもこの店の象徴だ。クロワッサン、エピ、独創的な練り込みパンがずらりと並び、思わず選びすぎてお腹が満たされる。ロブションにおいてはパンですら主役のひとつであることを実感する。

そして、この夜を彩ったワイン。ルイナールのブラン・ド・ブランから幕を開け、ルーロのムルソー、ロックのニュイ・サン・ジョルジュ。そして極めつけはDRCが手掛ける「コルトン」。DRCの名を冠するだけで場の空気が張り詰め、その奥行きと果実味はロブションの料理に堂々と寄り添った。正直、かなり背伸びしたラインナップだが、この殿堂で味わうに相応しい相棒だったと胸を張れる。

偉大なるジョエル・ロブションの哲学を、東京で追体験できる唯一無二の場所。格式と遊び心、伝統と革新、その全てを圧倒的な完成度で示す。美食を語るなら、この館を避けて通ることはできない。ご馳走様でした。
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ガストロノミー ジョエル・ロブション
03-5424-1347
東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13009310/