既存の料理ジャンルの概念を覆すようなモダンキュイジーヌの流れが止まらない。特にアジア料理に対するそれが盛り上がっており、モダンインディアンなどは世界的に注目を集めております。タイ料理やベトナム料理などこの流れに乗ったレストランが次々に登場しているが、ついにネパール料理のファインダイニングが登場した。名前は『OLD NEPAL TOKYO』。

モダンキュイジーヌの料理は斬新でありつつ、現代まで脈々と受け継がれる文化や哲学と結びついていることが重要だと考えるが、”OLD”の言葉にその意思が感じられます。
まずはお店の経歴からご紹介してまいりましょう。大阪にてネパール料理店「ダルバート食堂」を創業し、2020年に現在の豪徳寺商店街に移転。その後、2023年にリニューアルオープンして、現在のようなモダンネパールの境地に辿り着いたそうだ。ちなみに、大阪時代にも訪問経験があるが、その印象はアプローチの優しさ。味付けは塩のみで風味をしっかりと感じさせるような、素材リスペクトの料理だったと記憶しております。
ファインダイニングでもう1つ重要なことは、ストーリー。単なる食事を超えて、そこに込められたテーマやストーリーもまた料理の1つになる。今回のテーマは「Mustang(ムスタン)」というチベットと国境を接するネパールの山岳地帯。色のコントラストがとても美しい土地なのだとか。その土地を表現するために”色”を採用したプレゼンテーションになっております。

ドリンクもペアリングでお願いしたが、こちらもきっちりストーリーに組み込まれているので是非チャレンジしてほしい。最初は杉の葉を燃やしてその香りをグラスに閉じ込め、これを白湯でとかしていただきます。

その香りに一気に山の中の世界へひきこまれること間違いなし。ちなみに、店内のBGMは全て現地で録音したものだそうで、これもまた世界観を作る一助になっております。
「Dhok dok, Tsampa」
ヒマラヤに積もった雪の”White”を表現した一皿。”Dhok dok”というクッキー状のものは、晴れの日に食べる料理なんだとか。”Tsampa”とはネパールの昔ながらの主食の1つだそう。伝統的な料理達を彩り豊かなアミューズに仕上げているのです。

「Shyau」
“Shyau”はムスタンの名産である林檎のこと。林檎の”Red”にとどまらず、ビーツ、紫キャベツ、苺のアチャールなどと完全なる赤尽くし。チャットマサラで風味づけされて、しっかりネパールへとブリッジをかけております。ちなみに、品種はふじだが、ネパールで日本人が作っていた歴史もあるんだそうです。面白い。

「Alooko Achar」
ガンジス川とも繋がっている川の河原の風景。本物の石のように”Gray”に仕上げられたのは、じゃがいものアチャール。黒胡麻の風味と香りが全開な上に、少々強めの塩気が食欲をそそります。器も含めて川の清涼感のあるプレゼンテーションになっております。

「Ghandhau, Macha」
内陸国であるネパールへの意識からか、魚はきっちり淡水魚が選ばれます。”Green”の雰囲気は、緑豊かな渓流を意識してのことでしょう。この緑にはクリーミーさと青さがあり、しっかり魚料理のソースとして機能しております。鮎における蓼のような。重ねられた春野菜や山菜も世界観の一部にしっかりなっております。ちなみに、魚はシナノユキマス。しっとりとした火入れからは技術の高さが伝わります。

「Thukpa」
ネパール伝統のスープ麺のこと。竹炭を練り込んだ”Black”な麺で、天然きのこのアチャールとスパイスの効いた豆をトッピング。ユニークだったのは、鰹節のように干して作ったマトン節で、これが味わいにインパクトを作っております。ちなみに、高地であるネパールには保存食としてのルーツの食べ物が多いそうだ。

「Pani」
口直しにはヒマラヤからの雪解け水をイメージしたという”Clear”な一品。ライムのシャーベットは目だけでなく口にも涼しい。

「Bangurko Sekuwa」
メインは地層が作る”Brown”な風景を意識した料理。”Sekuwa”とはスパイスでマリネした豚肉料理のことで、低温調理によるしっとり感が秀逸。伝統料理にしっかりとモダンな工夫が施されます。スパイスの味わいや炭の香りは無条件に料理のレベルを上げ、さらに蕗の薹ややバナナの花のアチャールの味わいが味の層を作る。味の地層を見事に表現しております。

「Dal Bhat」
ネパール料理の食事といえば、やっぱりダルバートが務めぬ訳にはいきません。スモークした香りとコクがたっぷりのナマズのカレー、甘味ばかりでなく塩気もしっかりあるダルカレーが、たくさんの副菜を引き連れて登場。副菜には様々な味覚の刺激があり、混ぜて食べれば、そのたびに味の変化も楽しめます。

「Chamalko Kulfi」
最後は”Yellow”なビジュアルのデザート。甘酒のアイスに、ターメリック風味のメレンゲの板を重ねます。

ネパールの文化や哲学を理解し、その概念をアップデートしたモダンネパール料理の店。ぜひ一度体験してみてください。ご馳走様でした。
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OLD NEPAL TOKYO
03-6413-6618
東京都世田谷区豪徳寺1-42-11
https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131813/13248272/