古都・奈良で、肉を通して土地を味わう。大和八木駅前に構える『#肉といえば松田 奈良本店』は、奈良が誇る銘柄牛「大和牛」を軸にした和牛割烹。2022年11月に現在の場所へ移転リニューアル。黒を基調にしたカウンター、入口に据えられた盆栽、目の前に並ぶ熟成肉の塊。その空間には、単なる焼肉店でもステーキ店でもない、肉の劇場のような高揚感が漂う。

店を率いるのは奈良県出身の増田真志氏。23歳で料理人の道へ進み、イタリアンを中心に腕を磨き、31歳で県内にステーキレストランを開業。その後、焼肉店で精肉やホルモンまで牛肉全般を学び、自身の集大成としてこの店を立ち上げた。「肉といえば」と言い切る直球の店名には、肉の店として一番に選ばれる存在でありたいという覚悟が滲む。
主役はもちろん「大和牛」。この日はタンに始まり、近江牛タン、約3週間のカビ付け熟成を施したサーロイン、骨付き熟成肉まで登場。焼く、揚げる、寝かせる、出汁と合わせる。和牛の甘い脂をただ押し出すのではなく、奈良漬け、三輪そうめん、吉野の卵、大和野菜などを合わせ、奈良で食べる意味をコース全体に忍ばせているのが面白い。

「ロースのタルタル」は長芋とじゅんさいを合わせ、ねっとりとした食感の中に肉の旨味を閉じ込める。「ランプのローストビーフ」は地元ズッキーニと大葉のソースを添え、肉の甘みを爽やかに引き立てる。そして最後に印象をさらったのが、近江牛の「タン刺身」。昆布塩で輪郭を整えたタンは、噛むほどに旨味が立ち上がり、脂の甘みまで驚くほどクリア。この一皿だけでも、序盤の満足度をぐっと引き上げてくれた。

「ザブトンの蒲焼き」は、甘辛いタレを纏わせた肉版うな重のような一皿。香ばしく焼き上げた表面の先に、ザブトン特有の脂の甘みが広がる。そこへ実山椒が清涼感を添え、後味を軽やかに整える。合わせるのは福島県産の米「ゆうだい21」。肉の旨味を受け止めるだけでなく、タレまで余さず美味しくしてしまう名脇役だ。

「賀茂茄子と塩漬けロース」は、とろけるような茄子が肉の旨味を受け止め、山わさびが後味を引き締める。

「熟成ハンバーグ」はリブロースやネックなど複数部位を使った肉感あふれる仕上がりで、ブルーベリーを軸にしたソースが意外な相性を見せる。

そして「三輪そうめんのサンラータン仕立て」。牛出汁と鰹出汁を重ねた一杯に奈良らしさが顔を覗かせ、肉のコースに心地よい緩急を与える。

「骨付き熟成大和牛」は、約3週間の熟成をかけたこの日のメイン。香ばしく焼き上げた肉に、新じゃが、生胡椒の塩漬け、醤の香りを効かせた玉ねぎソースを添える。熟成香は強すぎず、肉の旨味にほどよい奥行きを加える。生胡椒の刺激や玉ねぎの甘みもよく、全体として過不足なくまとまっていた。

締めまで奈良らしさを忘れない。「枝豆ご飯」には和牛しぐれ煮と吉野の卵黄醤油漬けを添え、大和野菜の味噌汁や朝採れ白菜の漬物とともに楽しませる。ここだけでも十分に完結しているが、

さらに「和牛トロたく」、

「和牛カレー」、

「にゅうめん」まで用意されるのが松田流。

トロたくは脂の甘みと食感のコントラストが心地よく、カレーは肉の旨味を余すことなく回収する一杯。牛出汁のにゅうめんには小腸を忍ばせ、最後の最後まで肉の余韻を繋いでいく。
デザートは「パイナップルのジェラート」。濃厚な肉料理が続いた後だけに、この爽やかさが心地いい。パイナップルの瑞々しい酸味と果実感が口の中をリセットし、ジェラートのなめらかな甘みが余韻を優しく整える。

肉を食べに来たはずなのに、気が付けば奈良を味わっている。大和牛を中心に、奈良漬け、三輪そうめん、吉野の卵、吉野葛、大和野菜といった土地の記憶を織り込む構成力こそ、この店の魅力だろう。肉好きはもちろん、奈良の美味しさを今の形で体験したい人にもおすすめしたい一軒。ご馳走様でした。
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#肉といえば松田 奈良本店
050-5600-4143
奈良県橿原市内膳町5-2-40 FACEビル 2F
https://tabelog.com/nara/A2903/A290302/29013493/