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2026.06.03 夜

四川の本流に、旬と遊び心を重ねる。@好蘭

中華料理

名古屋市

30000円

★★★★☆

名古屋・栄のビルの2階に潜む中国料理店『好蘭』。2022年12月に開業した、カウンター11席の小さな舞台だ。オーナーシェフは秋山知弘氏。赤坂四川飯店で研鑽を積み、名古屋の名店では料理長も務めた四川料理の本流。掲げるのは「温故知新」の精神であり、伝統的な技法を土台に、旬の食材を独自の料理へと昇華していく。店名は、栃木で家族が営む中華料理店「好蘭」から受け継いだもの。町中華の記憶を背負いながら、名古屋で洗練されたコース料理へと発展させる。美しい継承だ。

好蘭の中華料理 - 食べある記

好蘭の料理は、四川料理の本流を踏まえながら、旬の食材と食感の重なりで一皿ずつ表情を変えていく。辛味や痺れだけで押し切るのではない。酸味、甘味、発酵のコク、香味野菜の清涼感、揚げ物の香ばしさまでを細かく組み立て、素材の魅力を引き出していく。刺激が食欲を呼び、食欲が次の刺激を求める。

「冷やし豆乳酸辣湯」から幕を開ける。いきなり麺類で始まることに驚かされるが、これが実に軽やか。白く滑らかな豆乳のスープに、赤い辣油が鮮やかなコントラストを描く。口に含めば、豆乳のまろやかさを起点に、酸味と辛味がじわりと立ち上がる。茗荷と木の芽の清涼感も心地よく、舌のスイッチを静かに入れていく。

好蘭の中華料理 - 食べある記

続く一皿には、「よだれ鶏」と「大根餅」が並ぶ。前者は、岐阜県産の恵那どりに、峨眉山の氷蒟蒻を合わせたもの。しっとりとした鶏肉へ麻辣ダレのコクと胡麻の香ばしさが絡み、氷蒟蒻の独特な弾力が食感のリズムを生む。後者は、表面を香ばしく焼き上げ、中はもっちり。その中に海老の風味が広がり、鮑の弾力と空豆の青い香りが重なる。麻辣の刺激と海の旨味。それぞれ異なる方向を向きながら、一皿の中で心地よい緩急を描いている。

好蘭の中華料理 - 食べある記

「稚鮎のクレープ包み」は、ほろ苦い稚鮎を香ばしい皮で包み、甜麺醤の甘味を添えたもの。そこへ青山椒の爽やかな刺激が差し込み、味わいに立体感を与える。苦味、甘味、香ばしさ、痺れが重なり合う複雑な構成だが、口の中ではきれいにまとまる。これは美味い。

好蘭の中華料理 - 食べある記

「湯葉春巻き」は、パリッと焼き上げた湯葉の中に、豆もやしをはじめとする野菜をたっぷりと巻き込む。表面の香ばしさと、内側のシャキシャキとした食感。その対比が心地よい。揚げ物が続いても重たさを感じさせず、素材そのものを主役に据えている。

好蘭の中華料理 - 食べある記

「夫妻肺片」は、牛すね肉やハチノスなど、複数の部位を麻辣でまとめた四川の伝統料理。肉の濃厚な旨味、内臓の弾力、香辛料の刺激。そこへトウモロコシやスナップエンドウの甘味が加わり、力強い味わいの中に季節の明るさが差し込む。伝統料理をそのまま再現するのではなく、日本の旬と自然に接続させる。この感覚こそ好蘭らしい。

好蘭の中華料理 - 食べある記

「四川式スモークダック」は、燻香をまとった鴨肉に、パン粉とココナッツを炒めた香ばしい衣をたっぷりと重ねる。XO醤と辣油のコクも加わり、サクサクとした食感、甘い香り、スモークの余韻が複雑に絡み合う。別々の方向を向きそうな要素だが、鴨の脂が全体をきれいに受け止める

好蘭の中華料理 - 食べある記

「気仙沼産毛鹿鮫の鱶鰭」は、白湯ではなく、豆板醤を軸にした力強い仕立て。揚げ茄子と九条葱を添え、鱶鰭の繊維へ濃厚な旨味をしっかりと絡ませる。高級食材をまろやかにまとめるのではなく、発酵のコクと辛味で輪郭を立たせる。その着地が実に好蘭らしい

好蘭の中華料理 - 食べある記

魚料理は「アオハタの香味醤油」。ふっくらと火入れされた白身に、新生姜と葱をたっぷりと重ねる。淡白な身の甘味を香味野菜が引き締め、食べ終えた後には爽やかな余韻だけが残る。濃厚な料理の合間に差し込まれるからこそ、この透明感が生きてくる。

好蘭の中華料理 - 食べある記

そして、やはり外せないのが「麻婆豆腐」。深い赤色をたたえた大鉢が運ばれてきた瞬間、香りだけで白米を求めてしまう。合わせるのは、愛知県・名倉高原産のコシヒカリ。口に運べば、辣の刺激、麻の痺れ、挽肉と発酵調味料の濃密なコクが押し寄せる。単に辛いのではない。辛味の奥に旨味があり、旨味のさらに奥に甘味が潜む。米を挟めば、また麻婆豆腐へ戻りたくなる。もう一口、もう一口。

好蘭の中華料理 - 食べある記

締めは「桜海老の清湯麺」。澄んだスープに桜海老を浮かべ、刻んだ葱を添える。濃密な麻婆豆腐の後にもかかわらず、清らかな旨味がすっと体に入ってくる。桜海老の香ばしさと甘味が余韻を作り、コース全体を穏やかに着地させる。

好蘭の中華料理 - 食べある記

甘味は「烏龍茶のパンナコッタ」と「黒胡麻の胡麻団子」。前者は、烏龍茶の清涼感が口の中を整える軽やかな仕上がり。

好蘭の中華料理 - 食べある記

後者は、香ばしい衣の中に濃厚な黒胡麻餡を忍ばせたもの。外側の香ばしさと、内側のねっとりとしたコクが心地よく、最後まで緩急を失わない。

好蘭の中華料理 - 食べある記

好蘭
052-291-4830
愛知県名古屋市中区栄5-1-21 MLアシスト栄ビル 2F
https://tabelog.com/aichi/A2301/A230103/23082675/

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