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2026.05.31 夜

中国料理の骨格に、モダンな感覚を重ねる。@中国料理マスキ

中華料理

広島市

30000円

★★★★☆

広島駅から歩いて10分ほど。京橋町の静かな一角に佇む中国料理店『中国料理マスキ』。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

2015年2月23日の創業。店主は増木利兆氏。横浜中華街などで磨いた技術を土台に、広東や北京といったジャンルの境界線に縛られず、その時々の食材を少量多皿のコースへと仕立てる。中国料理らしい力強い旨味や香りをきちんと備えながら、火入れ、食感、盛り付けにはモダンな感覚が宿る。瀬戸内の魚介や東広島の地鶏といった広島のテロワールも随所に取り込み、伝統を踏まえつつ、皿の印象はどこか現代的。そのバランスこそが、この店の個性になっている。

最初は「天然蛤のスープ」。島根県益田市鴨島の天然蛤を使った一杯で、澄んだスープに浮かぶ身はぷっくり。噛めば柔らかな弾力とともに、潮の旨味がじゅわりと広がる。余計な装飾に頼らず、蛤とスープだけでコースの幕を開ける潔さ。静かな始まりだが、印象にはしっかり残る。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

次は「すね肉の煮凝り」。鹿児島県鹿屋市「ふくどめ小牧場」の幸福豚、その前脚を使った一皿。端正に整えられた姿から、まずモダンな感覚が伝わってくる。口に運べば、冷たいゼラチン質が舌の温度でほどけ、遅れて豚肉の旨味がじわりと広がる。クラシックな料理を、見せ方まで含めて現代的に仕立てている。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

続いて「白ミル貝と黄韮」。山口県産の白ミル貝は、こりっとした歯切れの良さが印象的。そこへ黄韮のやわらかな香りを重ね、醤のコクで全体をまとめる。貝の甘味、野菜の香味、発酵調味料の奥行き。それぞれの要素が明確で、シンプルな構成の中に中国料理らしい香りの立体感がある。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

続いて「棒々鶏」。東広島こい地鶏は、しっとりとした火入れが印象的。肉には適度な弾力があり、噛むほどに旨味が膨らむ。そこへ胡麻の香りとコクを重ねながらも、鶏そのものの味わいはきちんと残す。棒々鶏らしい濃厚さと、端正な仕上がり。そのバランス感覚がいい。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

「マナガツオと胡瓜の胡麻和え」は、火入れの妙が光る一皿。表面には高温で一気に仕上げた香ばしさ。内側には、ふわりとほどける繊細な質感を残す。このテクスチャーは、狙った温度帯を的確に通過させなければ生まれない。胡瓜の瑞々しさと胡麻のコクが魚の脂を受け止め、後味を整える。見た目は穏やかだが、口の中では温度と食感の変化が鮮やかだ。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

「ピータン豆腐」は、ピータンのねっとりとしたコクに、豆腐の滑らかな口当たりを重ねる。胡麻油の香りが輪郭を与え、濃密でありながら重たさを残さない。親しみのある組み合わせだからこそ、濃度と香りの調整に料理人のセンスが出る。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

「サドルバック豚の叉焼」は、厚み、柔らかさ、香りの三拍子。噛めば肉の繊維がほどけ、脂の甘味がじわりと広がる。表面の焼き香、中心部のしっとり感、最後に残る脂の余韻。その三段階の変化が楽しい。叉焼という定番料理の中にも、店の技術がきっちりと刻まれている。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

「フカヒレと蓴菜」は、今回のコースでも特に印象に残った一皿。フカヒレに合わせるのは、濃厚な白湯ではなく澄んだスープ。蓴菜のつるりとした食感が加わり、ネギ油の香りが余韻を整える。フカヒレの繊維感を楽しませながら、味わいは最後までクリア。重厚感だけに頼らない発想がいい。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

「瀬戸内のアコウ」は、ふっくらと火入れされた白身に、実山椒の刺激と万願寺唐辛子の青い香りを重ねる。アコウの上品な旨味を中心に据えながら、香辛料と野菜で味わいに高低差を作る。瀬戸内の魚介を中国料理の文法で表現する、この店らしさがよく現れている。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

締めは「青柚子のラーメン」。澄んだスープに細麺を泳がせ、青柚子の爽やかな香りを立たせる。その奥には昆布の旨味があり、さらに椎茸のような深みまで感じたが、実際には椎茸は使っていないというから面白い。複数の旨味が重なった結果、存在しないはずのニュアンスまで想起させる。スープ作りの精度が、そのまま余韻の豊かさにつながっている。満腹のはずなのに、箸は止まらない。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

最後は「杏仁豆腐」。滑らかな口当たりと杏仁の香りが、コースの余韻を穏やかに整える。力強い旨味と香りを重ねてきた流れの中で、最後はすっと着地。食後の印象まで、きれいにまとめている。

中国料理マスキの中華料理 - 食べある記

中国料理としての確かな骨格を保ちながら、食感や盛り付けには現代的な感覚を差し込む。瀬戸内の魚介や東広島の地鶏といった広島のテロワールも取り込みつつ、土地の食材だけに寄りかかることなく、その時々の素材を柔軟にコースへ落とし込む。伝統をなぞるだけでも、モダンさを追い求めるだけでもない。その両者を無理なく共存させるバランス感覚こそが、『中国料理マスキ』の魅力。次の季節には、また違う表情に出会えそうだ。ご馳走様でした。

中国料理マスキ
082-261-0608
広島県広島市南区京橋町6-8 藤多ビル 2F
https://tabelog.com/hiroshima/A3401/A340121/34020426/

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