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2026.05.18 夜

海と山の気配が立ち上がる、美しきイタリアン@bekki

イタリアン・ピザ

福岡市

10000円〜29999円

★★★★☆

福岡・警固の住宅街、看板のない通路の奥に現れるイタリアン『bekki』。熊本の名店「IL CASINO」で知られる別城健太郎シェフが、2020年に福岡に構えた二号店であり、店名はもちろんシェフの名に由来するもの。白を基調とした空間、緑の庭、カウンター越しのライブ感。すべてが美しく整い、その中から九州の海や山の気配がふっと立ち上がる。綺麗なだけで終わらない、テロワールを映し込んだイタリアン。これが『bekki』の個性だ。

料理は、イタリア料理を軸にしながらも、九州の魚介や肉、野菜をしっかりと主役に立てる構成。火入れ、出汁、発酵感、油脂の使い方にセンスがあり、料理のテンポもいい。皿ごとに素材の輪郭がはっきりしていて、ソースやオイルがそれを塗りつぶさない。創作性という言葉に逃げず、食べた瞬間にちゃんと美味しい。

それでは、九州の素材とイタリア料理の技が交差するコースの構成を。

「ストラッチャテッラを包んだラビオリ」→「生ハムとラビオリ」
卵を使わない生地は、もちもちとした食感で、まるで上品な餃子のような親しみすらある。中にはストラッチャテッラ、上には福留牧場の鹿児島サドルバックの生ハム、仕上げにオリーブオイル。乳の甘味と生ハムの塩気、オイルの青い香りが一体となり、シンプルな構成ながら一口目からポジティブな驚きがある。

「福岡産キスのフリット」→「キスのフリット」
衣の軽さがいい。揚げ物に合わせるサルサヴェルデの酸味が秀逸で、キスの淡い旨味をぼやかさず、むしろ余韻を引き締める。さくっとした表面から、ふわっとした白身の甘味へ。見た目は軽快、味わいはきちんと深い。

「長崎小長井浅利のフラン」→「浅利のフラン」
出汁を卵で寄せたイタリア風茶碗蒸しのような一皿。あさりの旨味がじんわりと広がり、小葱の花が香りのアクセントに。ガラスの器の中に閉じ込められた海の出汁。和の記憶に触れながら、着地点はしっかりイタリアンというバランスが面白い。

「甘鯛の鱗焼き」
鱗を立てるように火入れし、有明のマジャクを殻ごとビスクにしたソースを合わせる。甘鯛の身はしっとり、鱗は香ばしく、そこに甲殻類の濃厚な旨味が重なる。ディルの香りが全体を重くさせないのもいい。魚の繊細さと甲殻の力強さ、そのコントラストに料理人の意志を感じる。

「うずらの炭火焼き」
丸ごとの魅力を活かした一皿。皮目には炭の香りが入り、身は小さいながらも旨味が濃い。ガラのソースが肉の奥行きを補い、香ばしさと滋味が一体になる。小さな鳥なのに、満足感はしっかり大きい。

「サザエのタリオリーニ」
個人的にかなり好きな一皿。サザエは鶏と一緒に真空調理して柔らかく仕上げ、肝をソースに使うことで、苦味と磯の香りを料理の芯に据える。タリオリーニの食感もよく、固形のサザエが噛むたびに旨味を放つ。苦味を恐れず、旨味に変換しているところに、この店らしい強さがある。

「自家製サルシッチャとグリーンピースのリゾット」
米の粒感がきちんと残り、サルシッチャの肉の旨味と糸島産のグリーンピースの青い甘味が好相性。黒胡椒が全体をきゅっと締め、最後まで食べ飽きない。これはまた食べたい。

「大分米仕上牛サーロイン」
粗い塩と胡椒、そしてニンニクの芽という潔い構成。肉は赤身の旨味と脂の甘味のバランスがよく、表面の香ばしさから中心のしっとりした火入れへと変化していく。余計な装飾をせず、肉の美味しさを正面から見せる。ここに安定感がある。

「焦がしメレンゲのアイス」
焦がしメレンゲの香ばしさに、トニックウォーターを注いで爽やかさを重ねるデザート。甘さ、苦味、炭酸の軽さが後味を軽やかにまとめる。コースの最後に重たく沈めず、すっと余韻を残すあたりも上手い。

別城シェフの料理は、熊本「IL CASINO」で培ったイタリア料理の骨格に、福岡・九州の素材感をのせていくスタイル。高級食材に頼らず、地元の魚介や野菜から九州らしいテロワールを立ち上げ、美しい空間や美しい皿の中に、土地の気配をきちんと宿している。料理はテンポよく、火入れやソースにも安定感があり、食後にはしっかり満足感が残る。それでいてコストパフォーマンスの良さも光るのだから、これは人気が出るのも納得だ。福岡で、綺麗なだけではないイタリアンを探すなら、警固の奥にあるこの一軒は覚えておいて損がない。ご馳走様でした。

bekki
092-517-2219
福岡県福岡市中央区警固2-2-11 シャンボール警固 1F
https://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400104/40057926/

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