2026.05.06 昼 古書店街の地下に、半世紀続くブラジルがある@神田伯剌西爾 喫茶店・カフェ 秋葉原・神田・水道橋 〜999円 ★★★☆☆ 伯剌西爾、これ読めますか? 答えはブラジル。かつてコーヒー豆の主要な産地として知られた国名に、あえて旧字の漢字をあてた店名である。名前からして、コーヒー専門店としての矜持がにじむではないか。神保町の古書店街、その地下に潜む老舗喫茶『神田伯剌西爾』。本の街らしい知的な響きと、珈琲の故郷を思わせる異国情緒。その両方を一つの看板に閉じ込めたような一軒である。1972年に神保町で開店し、半世紀を超えて愛され続けている。 階段を降りるほどに、地上のざわめきがすっと遠ざかる。店内に広がるのは、木の温もりと焙煎の香りが重なった、昔ながらの喫茶店らしい落ち着き。囲炉裏の席なんかもあり、和の情緒と珈琲文化が不思議と同居している。神保町で買ったばかりの本を開き、黒い珈琲をすすりながら時間を溶かす。きっと、そんな過ごし方が似合う店だ。 ここの軸は、自家焙煎の珈琲。直火式焙煎によって、豆の香りや苦味をしっかりと立ち上げるクラシックなアプローチである。いただいた「神田ぶれんど」は、創業以来の看板メニュー。酸味は穏やかで、主役はまろやかな苦味と深いコク。近年の明るく軽やかなコーヒーとは違い、味の重心は低め。漆黒の液体から立ちのぼる香ばしさ、口に含んだ瞬間に広がる苦味、そして余韻に残る丸み。昔ながらの喫茶店が守ってきた一杯だ。 合わせたのは「レアチーズケーキ」。白く端正な三角形が皿の上にすっと佇む。フォークを入れると、ねっとりではなく、すっと沈む軽い質感。口に運べば、ヨーグルトを思わせる酸味が先に立ち、チーズのコクが後から静かに追いかけてくる。甘さは強くなく、余韻に残るのは乳の重さよりも爽やかな酸。なるほど、これは珈琲の苦味を受け止めるためのチーズケーキだ。 ここは、神保町という街の文脈にぴたりとはまる喫茶店だ。伯剌西爾と書いてブラジル、本の街らしい知的な響きと、珈琲の故郷を思わせる異国情緒。古書店を巡った後にひと息つくにも、買ったばかりの本を開くにも、ちょうどいい場所。ここには、安心して身を預けられる定番の強さがある。ご馳走様でした。 — 神田伯剌西爾03-3291-2013東京都千代田区神田神保町1-7 小宮山ビル B1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13011590/