青森市の閑静な住宅街に佇む一軒家フレンチ『プチレストラン ブーケ・ド・フランス』へ。2002年創業、オーナーシェフは奈良崎裕道氏。青森出身で、フランスや都内の名店で研鑽を積み、現在は地元青森に戻って夫婦でレストランを営む。店名を訳せば、“フランスの花束”。その名の通り、店先からしてもう可愛らしい。白い外観に、花や緑が添えられた小さなレストランは、住宅街の中でそっと咲く花のような佇まい。肩肘張ったグランメゾンではなく、日常の延長に少しだけ特別な時間を用意してくれる、そんな温度感がある。

その可愛らしい空気は、料理にもそのまま貫かれている。皿の上には、店名そのままに花束のような華やかさがあるのだ。ただし、それはエディブルフラワーで飾るだけの話ではない。クラシックなフランス料理の骨格を土台に、火入れ、香り、ソース、食感のアクセントで、一皿そのものを華やかに咲かせていく。花で飾るのではなく、味で咲かせる。これぞブーケの文脈である。
料理の幕開けは「フォアグラのアミューズ」。香ばしい生地にムース状に仕立てたフォアグラを詰めた一品で、コーヒー豆を敷いた器からふわりと香りを添える演出も楽しい。濃厚なフォアグラのコクを、軽やかな生地の香ばしさが受け止め、ひと口の中に甘味、苦味、余韻がきれいに収まっている。小さな一品ながら、これから始まるコースへの期待値を静かに上げてくれる。

「陸奥湾の雲丹とトゲクリガニのフラン」は、青森の海の恵みを小さなカップに閉じ込めたような料理。トゲクリガニとは、青森で春を告げる存在として親しまれる小ぶりな蟹のこと。雲丹の甘み、蟹の旨味、フランのなめらかな口当たりが一体となり、液体と固体の境界をふわりと曖昧にする。濃厚なのに重くないのは、出汁の輪郭がきれいだからだろう。

「桜鱒」は38度で30分の火入れに、燻香をまとわせた一皿。しっとりとした身質に、香りがほんのり寄り添う。エディブルフラワーたちが皿上に春を咲かせ、見た目の可憐さとは裏腹に、味わいの芯はしっかりしている。低温調理のやわらかさ、燻製の香り、葉野菜の苦味が三位一体。

「馬肉のタルタル」は、パルメザンチーズのトルティーヤにのせて。地産の馬肉の赤身の旨味に、削りチーズの塩気とコク、オニオンチップのザクッとした食感がアクセントになる。青森の素材を軽やかな形状に落とし込む遊び心がありつつ、味の着地点はしっかりフレンチ。

「ホタテとビアンケットトリュフの包み」は、層をなす生地の中にホタテの甘みを閉じ込める構成。包むという所作そのものが、花束を束ねる店名の文脈とつながって見える。乳化したソースが全体をまろやかにまとめ、トリュフの香りが余韻に抜ける。視覚と味覚の両方で楽しませる。

「鮑」は、コシアブラと筍のリゾットにのせて。山菜の王様とも呼ばれるコシアブラの青い苦味、筍の春らしい香り、そこに柔らかく煮込んだ鮑のむっちりとした食感が重なる。肝のコクがソースのように全体をつなぎ、山と海の旨味を一皿にまとめ上げる。春の青森を噛みしめるような一皿だ。

「甘鯛」は、日本海側で揚がったものを鱗焼きに。鱗のサクサクとした香ばしさ、身のふっくらとした甘み、そのコントラストだけで十分に主役を張れる。そこに魚介のソースが旨味の厚みを加え、こごみの青さが脂とソースの濃度をすっと引き締める。余韻まできれいな、王道の魚料理だ。

肉料理は「牛フィレ」。火入れはしっとり赤身を残し、ソースの深みと野菜の彩りで完成させる。付け合わせの野菜はまるで小さなお花畑。見た目の美しさだけでなく、野菜の甘みや苦味が肉の余韻を整えてくれる。フィレの柔らかさにソースの輪郭が加わり、王道の満足感あり。

デザートは「桜のアイスとクレームダンジュ」。桜の香りがふわりと立ち、クレームダンジュの乳の軽さが余韻をやわらかく包み込む。花で始まり、花で終わるコース。最後まで店名の意味を裏切らない。

『プチレストラン ブーケ・ド・フランス』の魅力は、青森という土地の素材を、フランス料理の技術で無理なく楽しませてくれるところにある。ハーブや花、地元の魚介、山菜、肉。それらが見た目だけでなく、味わいの中でもきちんと咲いている。青森でフレンチを食べる意味を、皿の上で教えてくれる一軒。ご馳走様でした。
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プチレストラン ブーケ・ド・フランス
017-772-7967
青森県青森市虹ヶ丘1-10-7
https://tabelog.com/aomori/A0201/A020101/2000155/