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2026.04.27 夜

鳥料理の奥に、山と川の気配あり@水づき

焼鳥・焼きとん

目黒・白金・五反田

10000円〜29999円

★★★★☆

白金の路地に、土壁と小さな看板。余計な主張をしない入口の奥にあるのが『水づき』だ。店内に入れば、古木を生かしたカウンターやアンティーク調の設えが、静かに時間を重ねたような空気を作っている。新店らしい緊張感はあるのに、どこか昔からそこにあったような落ち着き。焼鳥店というより、山里の料理屋を白金にそっと移したような佇まいだ。

店主の水木氏は、岐阜の名門日本料理「たか田八祥」で腕を磨き、岐阜で「焼鳥みずき」を人気店へと育てた料理人。その後、東京・白金に場所を移し、屋号を『水づき』へ。岐阜で培った日本料理の感覚と、炭火で鶏を焼く技術。その両方を携えて、白金のカウンターに立っている。古木の質感、土の器、炭の香り、そして岐阜や滋賀の食材。水木氏の料理は、土地の記憶を東京で新しく響かせるような魅力を持っている。

始まりは「鳥レバーのムース」。陶器の小皿にのったムースは、見た目からして柔らかい。口にすれば、レバーの鉄っぽさより先にミルキーな丸みが広がり、後から内臓らしいコクがじわりと追いかけてくる。黒胡椒の香り、クリームの白い余韻、パンの香ばしさ。最初の一皿で、焼くだけの店ではないことをしっかり宣言してくる。

続く「近江軍鶏の食べ比べ」が面白い。左腿、右胸、親鳥と並べられた小さな肉片たちは、まるで筋肉の標本のよう。左腿には野性味としなやかさ、右胸には淡泊な中に潜む旨味、親鳥にはさらに強い噛み応えと密度がある。軍鶏らしい強い食感を噛み締めるほど、味がじわじわとにじむ。柔らかさだけを正義にしないところがいい。

「チキンカツ」は胸肉にブルーチーズを合わせる一品。黄金色の衣は軽く、断面の胸肉はしっとり。そこへブルーチーズの塩気と青い香りが重なり、淡泊な胸肉に奥行きを作る。鶏肉の脂ではなく、チーズの発酵香で満足感を出す設計が秀逸。焼鳥のコースに突然洋のニュアンスが差し込まれるが、不思議と流れを乱さない。

この日の主役級は「つくね」。表面はこんがり、内側は驚くほどジューシーで柔らかい。噛むと肉汁と脂の甘みがほどけ、鶏油のような香りが余韻を引っ張る。これはめちゃくちゃうまい。

焼き物は、串と皿を織り交ぜながら部位ごとの個性を浮かび上がらせる構成。肩まわりの希少部位は、皮目の香ばしさと身の瑞々しさのバランスがよく、

首肉は弾力と脂の甘さで食欲を引っ張る。

砂肝の歯切れのよさがコースにリズムを作れば、

ハラミは脂の迫力で一気に温度を上げる。

丸ハツはぷつんと弾ける食感の後に、澄んだ旨味が残る。串で香ばしく、皿でしっとり。炭の香りをまといながら、焦げではなく香ばしさで着地する。

野菜にもきちんと役割がある。「アスパラ」は青さと甘さを炭火で引き出し、焼き目の香ばしさが瑞々しさを引き締める。

「賀茂茄子」はとろりとした果肉に鰹節の旨味が重なり、焼鳥の合間に日本料理の呼吸を差し込む存在。肉の休憩ではなく、味の流れを整える一皿だ。

「淡海地鶏の骨付き腿肉」は、まずその迫力に笑ってしまう。大きさは正義、と言わんばかり。骨まわりの旨味まで食べさせる力強さがあり、皮は香ばしく、身はしっとり、骨際には濃い旨味が潜む。淡海地鶏らしい心地よい歯ごたえと上品な脂が、炭の香りと一体になって立ち上がる。豪快に見えて、火入れの着地点は実に繊細。ここに日本料理の人らしい品のよさがある。

さらに「あまご」。岐阜・和良川を思わせる清流の一皿で、皮の香ばしさ、身の繊細な甘み、川魚らしいほのかな苦味が一体になる。鶏の旨味が続いた後に、川の香りがふっと差し込む。この転調がいい。山と川の景色が、古木のカウンターの上にすっと現れる。

終盤には「蕎麦」。鶏ガラと鰹のダブルスープに、胡椒が輪郭をきゅっと締める。鰹の香りで和の余韻を作りながらも、土台にあるのはあくまで鶏の旨味。蕎麦という別ジャンルの料理を、鶏料理のコースへきちんとブリッジさせているのがいい。焼き物で高まった鶏の香ばしさを、今度は出汁の形で受け止める。最後まで主役は鶏なのだ。

締めは「そぼろ御飯」。白米に鶏そぼろ、そこへ「こしあぶら」の青い香りとほろ苦さが加わる。甘辛さだけに寄せず、山菜の香りで大人の着地点を作るのがいい。

そして、追い討ちの「カレー」。鶏の旨味を抱えたカレーは、コース終盤にもかかわらずスプーンを止めさせない。焼鳥の後にカレー、普通なら危険信号だが、ここでは幸福信号。

最後の「卵プリン」は、鶏を食べ尽くした後に卵へ戻る美しい着地。濃厚な卵のコクに、涼やかなジュレのような軽さが重なり、余韻をやわらかく終わらせる。鶏から卵へ。円環が閉じるような締め方に、ちょっとした洒落っ気を感じる。

『水づき』の魅力は、焼鳥を高級化したことではない。岐阜で磨いた日本料理の技術、鶏への信頼、山菜や川魚を扱う土地の感覚、それらを炭火の上で一本の物語にしていることにある。串で香らせ、皿で広げ、蕎麦や御飯でまた鶏へ戻していく。その流れが自然だから、食べ終えた後に重さよりも余韻が残る。白金にありながら、どこか山や川の気配を連れてくる鳥料理。次はどの季節に、このカウンターへ戻ろうか。そんなことを考えさせる一軒だ。ご馳走様でした。

水づき
03-6277-3411
東京都港区白金6-23-2 白金宏和マンション 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131602/13303865/

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