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2026.04.22 夜

「3」の世界を、味わう。@sanmi

50000円〜

★★★★☆

南青山の地下にひっそり潜む『atelier sanmi』。紹介制という閉じた扉の先にあるのは、ただの隠れ家ではない。店名が掲げるのは「酸味」であり、「三味」でもある。料理の中では酸を輪郭として働かせながら、店全体では「3」という思想で身体、精神、感性に触れていく。味覚の話に見えて、その実、もっと大きな体験の設計をやっている店だ。

靴を脱いで入る、そのひと手間からしてこの店はもう始まっている。外の気分をひとつ置いて、店の空気に身体を合わせていくための導入だ。空間は過剰に緊張を強いるものではなく、むしろ余計なノイズを削いで感覚を整えていくための設計。その中にアミューズがぽつぽつと置かれていくことで、コースの始まりというより、空間の中に味覚を配置していくような感覚が生まれる。なるほど“atelier”を名乗るわけだ。

「3kg」
三キロの野菜から、ごくわずかな水分だけを引き出したスープでコースは始まる。加水せず、野菜と塩の浸透圧だけで抽出した一杯で、派手さよりも素材の内側にある密度を飲ませる設計。

「メロッソ」
ふきのとうのほろ苦さに、海老の旨味とゴルゴンゾーラのコクを重ねた一皿。スペイン風おじやのような構成だが、狙いは異国感よりも春の苦味と発酵の調和にある。

「鮪」
この店の世界観が最もよく表れたスペシャリテ。鮪に紅生姜、マグロの酒盗、ビーツ、パプリカを重ね、皿をキャンバスのように仕立てていく。見た目は鮮やかだが、食べれば主役はあくまで鮪。アートに寄せながら、味はきちんと美味しさに着地している。

「緑蛍烏賊」
アスパラ、うすい豆、スナップエンドウ、ミントに蛍烏賊を合わせた、緑一色で構成する一皿。その色彩は春の気配を写すだけでなく、皿そのものをアートのように見せていく。

「筍3椒」
筍、帆立、ズッキーニをフリットにし、筍と鯛出汁のクリーム、花山椒でまとめた一皿。香ばしさ、丸み、抜ける香りが順番に重なり、春の食材を立体的に見せていく。

「酸味」
カプレーゼを思わせる口直しのひと皿。トマト、自家製リコッタ、バジルという親しみある構成の中で、酸を改めて輪郭として立たせる。この店の主題を、さりげなく中盤で引き戻してくる。

「桜魚」
白甘鯛に桜海老を重ねた、春の海を感じさせる一皿。甘鯛の繊細な甘みに、桜海老の香ばしさと旨味が重なり、軽やかなのに印象は薄くならない。

「鳩」
終盤を支えるのは、鳩の濃厚な旨味。ソースで力強さを作りながらも、肉そのものの火入れで緊張感を保っている。ここまでの流れを壊さず、味わいのトーンを一段深くしてくる。

「トマト麺」
フレッシュトマトのソースにチーズを重ねた、シンプルな締めの一皿。ここまで積み上げてきた世界観を、最後にぐっと親しみやすい形へ落とし込む。

「苺とミルク」
苺の甘酸っぱさとミルクの丸みをひと皿で重ね、最後はやわらかく着地。酸を大切にしてきた店らしく、その輪郭を残しながらも、食後感は角なく整えていく。

『atelier sanmi』の魅力を、あえて「3」にのせて挙げてみる。ひとつは、靴を脱ぐところから始まり、外のノイズをそっと外していく空間の作り方。ひとつは、皿をただの器ではなく、キャンバスのように使いながら、色彩や配置まで含めて見せていく表現の面白さ。もうひとつは、そうした思想や演出を積み重ねながらも、最後はきちんと料理の美味しさで回収してみせることだ。コンセプト先行で終わらず、食べ終えたあとにはちゃんと“いい食事だった”という感覚が残る。そのバランスに、この店ならではの魅力がある。ご馳走様でした。

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