2026.04.20 夜 北千住でひとり、餃子と酒と。@菜香餃子房 餃子 千住・綾瀬・葛飾 3000円〜4999円 ★★★★☆ 北千住の飲み屋街、その路地裏にひっそり灯る『菜香餃子房』。2013年6月オープン、上海出身の女将がひとりで切り盛りする、わずか6席の小さな店だ。しかもここは、ただの『餃子屋』じゃない。もちろん「焼き餃子」は名物的な位置付けにあるが、この店の主役は餃子だけではない。酒を飲み、つまみをつまみ、女将とのやり取りを楽しみ、ときに居合わせた常連との空気を分け合う。そんな時間そのものに価値がある居酒屋であり、基本はおひとりさま限定。酔いすぎた状態では入れない。万人受けより、店の流儀を守ってくれる客との呼吸を優先する。その姿勢がむしろ潔い。 料理の軸にあるのは、上海の家庭料理をベースにしながら、日本の酒場に心地よく着地させる感覚だ。看板の「焼き餃子」は、その象徴みたいな存在。まずは何もつけずにひと口。焼き面の香ばしさ、手作り皮のもっちりした弾力、そして中からたっぷりあふれる肉汁。小ぶりなサイズの中に、きっちり旨さの山場がある。 そのままで完成しているからこそ、「花山椒」「食べるラー油」「黒酢」を重ねても味がぶれない。痺れと辛味と酸味が加わっても、主役はあくまで餃子のまま。調味料は飾りではなく、餃子の美点をきちんと引き上げるためにある。 そこへ脇を固めるつまみもまたいい。「砂肝のオイル漬け」は、ねっとりとしたコクをまとわせながら、砂肝らしい歯ざわりはしっかり残す。胡椒を効かせたオイルをパンに受け止めれば、それだけで立派な酒の友になる。 「牡蠣の紹興酒漬け」はさらに酒場映えする一皿。まずは牡蠣のスープをひと口。これだけで酒が飲める。そこへ牡蠣の濃密な旨味に紹興酒のまろやかな香りが重なり、生姜が後味をきりりと引き締める。自然と杯が進んでいく。 「シャンラーシャ」も印象的だった。海老とニンニクの芽に、味を吸ったパン粉をたっぷりまとわせる。これが秀逸。海老の甘味、ニンニクの芽の青い香り、そこへ香ばしさとザクザクした食感が重なって、皿全体がぐっと立体的になる。パン粉がおかずになる、そんな言い方がしっくりくる一皿だ。 「上海大ワンタン」は一転して、つるりとした皮、ふくよかな餡、そして筍の香りを映した澄んだスープが持ち味。やさしい顔をしながら、しみじみとうまい。 この店の魅力は、料理の完成度だけでは語りきれない。餃子が店の顔としてしっかり立ちながらも、それ一辺倒に着地しないのがいい。酒を片手に、つまみを挟み、女将とのやり取りに店の空気を感じる。その時間の真ん中に、ちゃんと「焼き餃子」がある。北千住の路地裏で、腹を満たす以上の夜を過ごしたい時に思い出したい一軒。餃子好きはもちろん、酒場好きにもきっちり刺さる。ご馳走様でした。 — 菜香餃子房080-2034-4558東京都足立区千住1-39-9https://tabelog.com/tokyo/A1324/A132402/13158080/