2026.04.20 昼 中華街に根を張る、家族の味@許厨房 中華料理 横浜市 1000円〜2999円 ★★★★☆ 横浜中華街の喧騒を少しだけ外した場所にある『許厨房』。看板には「オーナー師父の店」、メニューには「母から息子へ、息子から孫へ」とある。台湾人の両親を持つ店主が、父は厨房、母や姉たちはホール、さらに次の世代へと味をつないでいく家族の店だ。台湾料理を軸にしながら北京、上海、四川の要素まで抱え込むが、芯にあるのは家庭の味の継承。つまりここは、中華を食べる店である前に、家族の記憶を食べる店でもある。 「皿ワンタン」は、この店の名物のひとつ。見た目はつるんと穏やかだが、口に入れると表情が変わる。皮のなめらかさ、油の香ばしいニュアンス、パクチーの青さ、最後に辛味。この流れがいい。やわらかいだけで終わらず、香りと辛味で輪郭を作っている。つるん、じゅわっ、ふわっ、ぴりっ。茹で物なのに印象がぼやけず、ちゃんと記憶に残る。こういうのは、気づけば箸が止まらない。 「牛バラ煮込み刀削麺」も面白い。メニューに、この料理の主人公は刀削麺ではなく牛バラ肉だと書いてあるが、まさにその通り。牛バラの旨味をスープに溶かし、さらに麺にまで含ませるために刀削麺を選んでいる。スープはふくよかで、辛味は尖らずじんわり。 牛バラはやわらかく、青菜と白髪葱が重さを逃がす。さらに刀削麺は、一般的な中華麺のような均一な細さではなく、幅広で不揃い。この形がスープを受け止め、旨味をしっかり連れてくる。 『許厨房』は、家族の物語を看板に掲げ、その物語をちゃんと料理で回収してくる店だ。香りの重なりに惹かれ、主役の立て方に納得する。中華街の中で、ただ賑やかなだけでは終わらない一軒。腹を満たすだけでなく、店の背景ごと記憶に残る。ご馳走様でした。 — 許厨房045-264-4689神奈川県横浜市中区山下町188https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140105/14011975/