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2026.04.18 昼

江戸の洒落を、芝大門で啜る@ときそば

そば

浜松町・田町・品川

1000円〜2999円

★★★★☆

芝大門の路地に暖簾を下ろす『ときそば』。2009年に新橋で開業し、のちに芝大門へ移転した一軒で、自家製粉手打ちの十割蕎麦を掲げ、細打ちと田舎、喉越しと咀嚼の両輪で蕎麦を楽しませてくれる。店名を見れば、やっぱり古典落語の「時そば」が頭をよぎる。江戸の時刻を数えながら勘定をごまかそうとする、あの軽妙で少し間の抜けた滑稽噺。そんな江戸の洒落を下敷きにしているところにも、この店の面白さがある。

いただいたのは「いか天そば」。まず印象に残るのは、温かいつけ汁だ。出汁の輪郭はきちんとありながら、「いか天」の旨味と油が溶け込み、蕎麦をくぐらせるたびにふくよかさが追いかけてくる。ただ端正なだけで終わらず、少しだけジャンキーな色気を差し込んでくるのがいい。「いか天」も単体で主張するというより、出汁を吸った衣と、じわっと広がる烏賊の旨味がつけ汁の芯になっている。整えた蕎麦の世界に、烏賊天がちょっと悪い遊びを差し込んでくる。この塩梅がうまい。

そんなつけ汁を受け止めるのが、細打ちの蕎麦だ。端正な顔つきで、啜ればするりと喉を抜ける。それでいて、噛み込むと蕎麦の香りがじわりと戻ってくるのがいい。十割らしい輪郭をきちんと残しながら、重たさを感じさせない仕上がり。見た目の美しさ、口当たりのしなやかさ、余韻に残る穀物の香ばしさまでが素直につながっていて、細打ちの魅力をきれいに伝えてくる。

そして食べ終える頃には、「田舎」も手繰りたくなる。細打ちで喉越しを楽しませ、田舎で噛み締める喜びも用意しているのが、この店の懐の深さだろう。ひとつの正解を押しつけるのではなく、蕎麦という食べ物の違う顔をきちんと揃えている。そう思わせるだけの説得力がある。

落語の「時そば」は、うまくやったつもりが最後に勘定が合わなくなる噺だが、『ときそば』の一杯は逆だ。つけ汁の厚み、いか天の旨味、細打ちの啜り心地、それぞれの役割が食べ進めるほどにきちんと噛み合っていく。芝大門で蕎麦を食べる理由として、しっかり記憶に残る一軒。ご馳走様でした。

ときそば
03-6450-1152
東京都港区芝大門1-2-21
https://tabelog.com/tokyo/A1314/A131401/13289681/

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