築地の路地裏、住所そのままを店名に掲げる『築地長屋6-7-7』。2021年にオープンした、昭和2年築の長屋を活かした一軒だ。酒の肴から締めまで幅広く揃えるが、この店の軸にあるのは河豚をもっと気軽に、もっと日常に引き寄せようという発想。高級食材の代表格みたいな顔をしてきた河豚の敷居をすっと下げて、長屋の空気に馴染ませてしまう。その着地が実にうまい。

乾杯は「ひれ酒」。香ばしさがふわりと立ち上がり、口に含めば熱の奥から河豚の旨味がじわじわと広がっていく。ひと口で胃袋と気分がちゃんと酒場モードに切り替わる。

こうなると肴が欲しくなるのは当然で、「ふぐの唐揚げ」が実にいい仕事をする。衣は軽快、噛めば河豚の身の弾力と淡い甘みが顔を出し、骨まわりの旨さまできっちり拾ってくる。河豚料理を格式ではなく、ちゃんと酒のアテとして機能させているのがこの店らしい。料理は全体にポーションが小ぶりで、ひと皿ごとのハードルも低い。だからこそ、河豚も酒場料理もあれこれ摘みながら、この店の懐の広さを無理なく楽しめる。

その流れの中で面白かったのが「真子ピザ」。河豚の卵巣の粕漬けという、ただでさえ個性の強い素材をピザに乗せてしまう発想がまずいい。見た目は親しみやすいのに、食べると塩気と発酵のコクがチーズに溶け込み、日本酒へときれいに接続する。

河豚に寄せた店かと思いきや、脇を固める料理もなかなか抜け目がない。「肉豆腐」は牛肉の脂と玉ねぎの甘み、豆腐に染みた出汁がきっちり噛み合い、ほっとするのに酒は進むという酒場料理の王道を歩く一品。

「築地一のおしゃれなポテサラ」は名前に少し照れがあるが、半熟玉子のまろみとクリスピーなトッピングで、ただの付け合わせでは終わらせない工夫がある。

「雲仙ハムカツ」は一転してストレートな旨さ。厚みのあるハムの塩気と旨味をサクッとした衣が受け止め、粒マスタードが全体を引き締める。

さらに面白いのは、酒場の定番にほんの少し異国の空気を差し込んでくること。スタッフにベトナム出身の方がいるそうで、その背景が料理にも滲む。「パクチーポテト」は、じゃがいもの甘みと油のコクに、パクチーの青く鮮やかな香りを重ねた一品。

「サクサク海鮮揚げ春巻き」も然りで、軽快な食感のあとに海鮮の旨味が広がり、酒場料理の中にベトナムのエッセンスを自然に溶け込ませている。

締めに向かっても手を抜かない。「実家のカレーライス」は名前に反して、単なるノスタルジー任せではない。どこか家庭的な安心感を漂わせながら、酒を飲んだあとの舌にちゃんと馴染むバランスに整えてあるのがうまい。

そして「塩結び」。白飯の甘さをまっすぐ味わわせたうえで、真子の塩気と旨味を添えてくる。豪華な締めではないのに、最後にこれが出てくると気持ちよく終われる。

長屋の風情に寄りかかるだけでもなく、河豚の珍しさだけで押すわけでもない。『築地長屋6-7-7』の魅力は、河豚をはじめとした素材や酒場料理を、築地の日常の延長線上にきちんと置いてみせることにある。構えず入れて、ちゃんと楽しい。しかも飲んで食べていくうちに、この店なりの狙いもじわじわ伝わってくる。河豚の入口としても、築地の一杯としても、しっかり成立している一軒だ。ご馳走様でした。
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築地長屋6-7-7
080-3723-7872
東京都中央区築地6-7-7
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131301/13265484/