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2026.04.05 夜

握りを主役に据えた、三つ星のその先@右江田

寿司

名古屋市

30000円〜49999円

★★★★★

名古屋・中川区の住宅街に静かに溶け込む『右江田』。三つ星という称号すら、この店にとっては結果論に過ぎない。ここにあるのは、江戸前という技術体系をどこまで純度高く体現できるかという問いへの答えだ。軸は一貫している。握りを主役に据えること。その思想が、空間にも、構成にも、そして一貫一貫の中にまで徹底して流れている。

その核にあるのが赤酢のシャリ。甘さに頼らず、酢と塩で輪郭を引き締めた設計で、ネタの脂や旨味を受け止める土台として機能する。口に入れた瞬間はキリッとした印象だが、温度とともにほどけ、ネタと一体化していく流れが実に滑らかだ。米粒は立ち、握りは軽やか。それでいて崩れない、この絶妙なバランスに職人の技術が滲む。

まずはコースの序盤を彩るつまみから。「毛蟹」は土佐酢ジュレの酸と味噌のコクが重なり、繊維のほどけとともに旨味が立体的に広がる。

「目光の一夜干し」は、脂の甘さと干しの工程による凝縮感、その両方が噛むたびにじわりと滲む。いずれも完成度は高いが、あくまで主役である握りへと導くための助走。この流れがあるからこそ、後半の一貫一貫の輪郭がより鮮明に立ち上がる。

この日の白眉のひとつが、鮪の存在だ。「血合いぎし」は鉄分のニュアンスと旨味の濃さが際立ち、鮪という素材の奥行きをいきなり見せつける。

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「中トロ」は脂の融点とシャリの温度が重なり、舌の上で一瞬にして解ける。

「大トロ」はさらに官能的な広がりを見せ、

「赤身」は研ぎ澄まされた旨味で輪郭を引き締める。そして特筆すべきは、この鮪の脂や旨味が赤酢のシャリと噛み合ったときの完成度の高さだ。キリッとした酸が脂を受け止め、輪郭を崩さずに旨味だけを引き上げていく。

そして終盤の「トロ鉄火手巻き」で再びその余韻を引き戻し、鮪というテーマをもう一度強く印象づける構成も抜かりない。

「小肌」は締めの塩梅が見事で、酸の角を立てすぎず、旨味との均衡点をきっちり捉える。

「雲丹」は濃厚な甘みを持ちながらも後味は驚くほど軽く、海苔の香りとともに一気に抜けていく。

「鳥貝」はサイズや個体の違いで二種が用意され、それぞれで食感と甘みの表情が異なるのが面白い。肉厚なものは噛みごたえと旨味の広がりが際立ち、もう一方はより繊細な甘みがじわりと滲む。

「赤貝」は香りの立ち方が鋭く、磯のニュアンスが一気に鼻へ抜ける。

「煉子鯛」は白身の持つ繊細な旨味を丁寧に引き出し、

「のどぐろ」は皮目を炙ることで脂を香ばしさへと転換する。

「穴子」はふわりとほどける口当たりの中に、タレの輪郭をしっかりと残す仕上がり。

「蛤の吸い物」は出汁の透明感と貝の滋味で一度リセットをかけ、

「干瓢」で甘みの余韻を穏やかに広げ、

「玉子」で静かに着地。この流れに一切の淀みがない。

右江田氏の握りは、派手な個性を主張するものではない。ただ、仕入れ、寝かせ、包丁、握り、温度、そのすべてが一本の線で繋がっている。だからこそ一貫が完成された料理として成立する。つまみはあくまで序章、主役は最後まで握り。このブレなさが、体験全体に強い芯を生む。食べ終えた後、記憶というより感覚に残る。気づけばまた、このカウンターに座る道を探している。予約困難につき。笑

ご馳走様でした。

右江田
052-353-6005
愛知県名古屋市中川区八幡本通2-20
https://tabelog.com/aichi/A2301/A230105/23014106/

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