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2026.03.24 夜

すし匠、その型の現在地@すし匠

寿司

新宿・代々木・大久保

10000円〜29999円

★★★★★

四谷の名店『すし匠』。その名を語るとき、まず外せないのは創業者・中澤圭二氏の存在だろう。握り一辺倒でも、つまみ主体でもない。両者を自在に行き来する構成を打ち立て、寿司のコースに“流れ”という概念を持ち込んだ人物だ。そのスタイルを携え、ハワイやニューヨークへと渡り、寿司という文化の伝え方そのものに挑み続けた。その軌跡が、このカウンターの文脈を形作っている。そして現在、そのバトンを握るのが勝又氏。系譜をなぞるだけではなく、型として身体に落とし込み、目の前の一貫一貫に落とし込んでいく。

さっそくコースの紹介をしていこう。

「蛤の茶碗蒸し」蛤の旨味がこのコースの基準を静かに決め、温度と香り、出汁とあおさの層で一気に世界観を作る導入。

「白魚」の軍艦は、口に入れた瞬間にほどけるような食感と淡い塩味で一瞬のピークを作る。

「真鯛」の刺身で寝かせの旨味をまっすぐ提示。

「春子鯛」はその繊細な身質と仕事で輪郭を整え、

「鰹」の握りは香りと酸をまといながら軽やかに抜けていく。

「赤身」の漬けで旨味を凝縮させ、流れに芯を作った直後に、「蛸の柔らか煮」を差し込む。繊維の奥まで味を含ませ、噛むほどに旨味が滲ませる。

続く「帆立」は、握りと精巣・卵巣という二つの方向性で楽しませる構成。前者で貝の甘みをストレートに提示し、後者で胡麻油の香りとともにコクの世界へ引き込む。

「小肌」で酸に引き戻し、

「平貝」には山椒を添えて余韻をシャープに整える。

「アオリイカ」でねっとりとした甘みを作り、

「鰯」は脂と酢のバランスで押し切る。

「太刀魚の塩焼き」で火入れの妙を見せ、

「中トロ」で脂をほどき、

「車海老」で甘さのピークを作る。

そこから「槍烏賊」で軽やかにリズムを戻し、

「蛍烏賊」で内臓のコクを重ね、

「金目鯛炙り」で香ばしさを纏わせる。

そして名物はやはり別格。「あん肝西瓜」は濃厚と瑞々しさという対極の融合で記憶を揺さぶり、

「おはぎ」は叩いた鮪の旨味を塊で叩き込む象徴的な一貫。弟子たちがそれぞれの場所でこの系譜に挑み続けているが、やはり原点の説得力は圧倒的。このカウンターで食べる意味が、はっきりとそこにある。

終盤、「穴子」で全体をふわりと包み込み、

「塩のアイス」で余韻を整える。すべてが流れの中で必然的に配置され、ひとつの物語として美しく閉じる。

一貫一貫の完成度は言うまでもないが、この店の真価は連なりにある。点ではなく線、そして体験。寿司を食べているはずなのに、気づけば時間ごと味わっている。実は、今回は十年ぶりの再訪。引き継ぎ直後とはまるで別物、完全に自分のものにしていた現在地。そして彼は次の舞台へ向かう。この場所はまた新たな職人に受け継がれ、同じ型の中で新しい物語が紡がれていくのだろう。ご馳走様でした。

すし匠
03-3351-6387
東京都新宿区四谷1-11 陽臨堂ビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130902/13000852/

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