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2026.03.12 夜

土佐の風が吹く焼鳥コース。@焼鳥 山香

焼鳥・焼きとん

四ツ谷・市ヶ谷・飯田橋

10000円〜29999円

★★★★☆

神楽坂の喧騒から少し離れた矢来町。住宅街のビル2階に暖簾を掲げる焼鳥店『焼鳥 山香』。店名の「山香は、店主の出身地である高知県香美市(旧・香北町)の「香」の字から取ったものらしい。焼鳥の技術は『鳥恵』出身。一方で、豚ホルモン料理で知られる『婁熊東京』での経験もあるという。焼鳥の王道に立ちながら、どこか構成に個性があるのは、この少し異色の経歴も影響しているのかもしれない。そこにルーツである高知の食材が重なり、この店の輪郭が出来上がっている。

コースには店主のルーツでもある高知の地鶏「土佐ジロー」をはじめ、ホロホロ鳥や庄内鴨など多彩な鶏が登場する。焼鳥店では一種類の鶏で構成する店も多いが、ここでは肉質の違いを活かして鶏種を使い分けている。筋肉質で旨味の強い土佐ジロー、弾力のあるホロホロ鳥、そして脂の甘みを持つ庄内鴨。串を重ねるごとに食感や味わいのニュアンスが変わり、コース全体に立体感が生まれていく。

それでは店の名前を冠した「山香コース」をいただいていきましょう。まずは串以外の料理から。

前菜では三つの小皿が並ぶ。茶碗蒸しは土佐ジローの卵を使い、濃い旨味が印象的。土佐ジローは卵の美味しさでも知られる鶏だが、料理にしてもその個性がしっかりと伝わる。胸肉はルッコラと合わせて爽やかな仕立て。さらに苺と金柑の白和えにはマスカルポーネを合わせ、甘味と乳のコクを重ねる。焼鳥屋の前菜というより、小料理屋のような静かな入り口だ。

続いて「季節の有機野菜のサラダ」。ここでも地元高知の文旦が登場し、爽やかな苦味と柑橘の香りが口の中を整える。途中には串とは別に、鶏料理の皿も挟まれる。

「土佐ジローの炭火焼き」は胸、もも、ソリレス、皮を土佐の塩でシンプルに。特にもも肉は弾力があり、噛むほどに旨味が滲む。やはりこの鶏は身質が強い。

さらに「土佐はちきん地鶏の手羽先煮込み」。濃厚なコクが印象に残る一皿だ。合間には箸休めも。

「手羽皮のポン酢」で脂を軽く流し、

「レバーペースト 生姜ジャム」は濃厚なレバーに生姜の甘味と辛味が重なり、意外な相性の良さを見せる。

続いて串へ。最初の一本は「庄内鴨のささみ」。焼鳥のコースのスターターとして鴨が登場するのは少し意外だが、この店らしい始まり方。しっとりとした火入れで繊維がふわりとほどけ、鴨ならではの旨味も感じさせる一本だ。

続く串はホロホロ鳥。まずは「せせり」。弾力ある肉質が印象的で、オーガニックマスタードが脂を軽やかに切ってくれる。

「はつ」は噛むたびに弾ける食感で、内臓ならではの旨味もしっかりと感じられる。

「ねぎま」は肉の弾力と葱の香ばしさ。焼鳥の王道の形だが、ホロホロ鳥ならではの力強い食感が存在感を放つ。

「レバー」はやや野性味を感じる個性的な一本。

そして「つくね」。肉の粒感を残した食感設計で、噛むほどに旨味が広がっていく。途中に挟まれる野菜も印象的だ。

「ブロッコリー」は房ごと串に刺して焼き上げ、タレが房の隙間に焼き付くことで香ばしさが際立つ。

「蓮根」は茨城の蓮根。シャクッとした歯触りがコースのリズムを整えてくれる。

最後は「そぼろ丼」。鶏の旨味をしっかりとまとったそぼろに卵が絡み、締めにふさわしい一杯だ。

さらに鶏の出汁が効いたスープが添えられ、コースの余韻を静かにまとめてくれる。

庄内鴨、ホロホロ鳥、そして土佐ジロー。複数の鶏を使い分けながらコースを組み立てることで、焼鳥の流れに小さな変化を生み出している。そこに店主のルーツでもある高知の食材が重なり、この店ならではの個性が浮かび上がる。焼鳥の王道を歩きながら、ところどころに個性を作る“ずらし”のも面白い。ご馳走様でした。

焼鳥 山香
03-6265-0108
東京都新宿区矢来町64-4 DEAR神楽坂 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13245585/

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