福島の夜、炭の香りに誘われるように暖簾をくぐる焼き鳥屋『鶏けん』。1999年創業、地元の人たちが足繁く通う一軒だ。街の常連たちが自然とカウンターに集まる距離感。焼き場との距離も近く、串が焼ける音と香りを感じながら次の一本を待つ時間が流れる。主役は福島のブランド鶏「伊達鶏」。脂の甘みと弾力のバランスに優れた鶏で、ここでは串をストップ制で提供。焼き手のリズムに身を任せながら一本ずつ味わっていくスタイルだ。

焼きの前に、この店のもう一つの顔から触れておきたい。「会津馬刺し」だ。注文したのはロースとタテガミの盛り合わせで、福島らしく特製の辛味噌でいただく。赤身はしっとりと柔らかく、噛むほどに甘みがにじむ。そこにタテガミの脂が重なることでコクが生まれる。焼き鳥屋にいながら土地の食文化を感じさせる一皿であり、串のスタートを整える役割も担っている。

焼きは、伊達鶏の旨味を素直に引き出す焼きが中心で、ポーションはやや大きめ。炭火の香ばしさを土台にしながら、脂の甘みや塩気をしっかり感じさせる構成だ。そこにマスタードやハリッサといったアクセントを添えることで味の表情を変えていく。串の合間には「スープ茶碗蒸し」や

「レバーパテ」といった料理も挟まり、焼き鳥のリズムに小さな変化をつける。

さらに印象的だったのが「金柑」。海苔の上にご飯を敷き、その上に濃厚な金柑を乗せる一皿。

「ささみ」は大きめのポーション。一定度のしっとり火入れで、伊達鶏の優しい旨味が素直に広がる。

「もも肉(タレ)」は脂とタレの甘みが重なる王道の一本。

「くびかわ」は脂と塩気のインパクトが強く、酒が進むタイプ。

「せせり」はマスタードを添え、脂のコクに酸味のアクセント。

「膝まわりの肉」はハリッサを合わせ、スパイスの辛味が肉の旨味を押し出す。

「やげん軟骨」はコリコリとした食感が楽しい。

「つくね」は卵黄に絡めて食べるスタイルで、濃厚なコクが口の中で一体化する。

「ちょうちん」はこの日のハイライト。串を持ち上げた瞬間、黄身がとろりと落ちる光景は焼き鳥の醍醐味そのものだ。

「スナップえんどう」は炭火で甘みが際立つ。

「ひもなす」は熊本産。とろりとした果肉が印象に残る。

締めは「親子丼」。卵がとろとろに溶け込み、鶏の旨味と一体化したいわゆる“飲める系”。串で味わった伊達鶏の旨味を、最後にご飯で回収するような一杯だ。

焼き鳥の主役はあくまで伊達鶏。その旨味を素直に引き出す焼きを軸にしながら、会津馬刺しのような福島らしい一品や、串の合間に登場する金柑などが流れにアクセントをつける。串のリズムに身を任せ、料理を挟みながら進む時間もこの店の魅力のひとつだろう。1999年創業、地元の人たちが足繁く通う理由がよくわかる一軒。福島の夜に、肩肘張らず焼き鳥を楽しむ。そんな使い方がよく似合う店である。ご馳走様でした。
—
鶏けん
050-5595-8422
福島県福島市栄町12-1 第1寿ビル1F
https://tabelog.com/fukushima/A0701/A070101/7000904/