大阪随一の夜の美食街・北新地。その地下に店を構える『北新地 福多亭 The Ukai』。高級店が並ぶこの街にあって、肉料理を主役に据えた一軒だ。中央に据えられた炉窯を囲むカウンター席が、この店の印象的な風景。

手掛けるのは大阪生まれのシェフ鵜飼浩氏。街場のイタリア料理店でキャリアをスタートし、その後イタリアへ渡り修業を積む。帰国後はリストランテのシェフとして活躍し、この店を率いるようになってからは長年ミシュラン一つ星を獲得してきた。肉料理を中心に据えながらも、イタリア料理の経験を背景に持つ料理人らしい構成が、この店の料理に表れている。

コースの幕開けは、自家製バンズと黒毛和牛フィレのみを使った小さな「ハンバーガー」。一口サイズの可愛らしいフォルムだが、噛んだ瞬間に肉の旨味がぐっと押し寄せる。脂は重すぎず、むしろ肉の密度を感じさせる仕上がり。これから始まる肉料理のコースを予告するような一皿だ。

続くのは「パン ド カンパーニュ&バターロール」。香ばしいクラストとしっとりした内層のカンパーニュ、艶やかなバターロール。シンプルだが、食事のリズムを整える役割をしっかり果たしている。

前菜は「白甘鯛の鱗焼き ホワイトアスパラガスと春野菜」。鱗を立たせて焼いた甘鯛はパリパリと軽快な食感。淡い甘みの白身に、ホワイトアスパラや春野菜の瑞々しさが重なる。そこにオランデーズソースのコクが加わり、クラシックな構造の一皿に仕上がっている。

パスタは「黒毛和牛のラグーソース、ショートパスタ」。使われるのは“半袖”という意味を持つ筒状パスタ「メッツェマニケ」。濃厚なラグーソースにバタークリームのコクが重なり、仕上げには黒トリュフ。

「黒毛和牛のリストレットコンソメスープ」は牛の前スネ肉を香味野菜とともに長時間煮込んだもの。澄んだ液体ながら、口の中に広がる旨味の密度は濃い。余韻がじわりと長く続く。

「季節の有機野菜サラダ」は泉州玉葱のドレッシング。梶谷農園のマイクロリーフを中心に、野菜の瑞々しさと玉葱の甘みが重なる。肉料理の合間にリズムを整える一皿。

そして主役、「窯焼きステーキ」。この日は黒毛和牛の「フィレ」と「イチボ」。炉窯の強い熱で外側を焼き締めながら、内部にはじっくりと火を入れる。サシの量ではなく、肉の質や繊維の柔らかさを重視したスタイル。噛むほどに旨味が広がり、脂はゆっくりと溶けていく。

続いて登場するのが名物の「シャトーブリアンサンド」。厚切りのシャトーブリアンを香ばしく焼いたパンで挟み、特製ソースとマスタードマヨネーズでまとめる。肉のジューシーさ、パンの香ばしさ、ソースのコク。そのバランスが絶妙で、思わず食べ進めてしまう。

締めは「フィレ肉のそぼろご飯」。卵黄の醤油漬けと九条葱を添えた一杯で、肉の旨味をご飯が受け止めるシンプルな構図。コースの終盤に訪れる安心感のある一皿だ。

デザートは「ストロベリーヨーグルトのジェラート」。肉料理の余韻を爽やかな酸味で締めくくる。

イタリア料理の経験を土台にしながら、炉窯という火の力で肉の旨味を引き出す。その軸がぶれることなくコース全体に通っている。北新地の数多の名店の中でも、肉を中心に据えた個性をしっかりと感じさせる一軒。窯焼きという火入れの魅力を味わいたい人には、きっと記憶に残るだろう。ご馳走様でした。
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北新地 福多亭 The Ukai
050-5590-9136
大阪府大阪市北区曽根崎新地1丁目11-19 北新地スタービル B1
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