2026.02.23 夜 伝統をアップデートする、自家製醤の魔力@豊栄 中華料理 大塚・巣鴨・駒込・赤羽 5000円〜9999円 ★★★☆☆ 文京区本駒込に店を構える『豊栄』。その歴史は2016年、茗荷谷での創業から始まる。オープン直後から評判を呼び、ミシュランガイドのビブグルマンにも掲載。2022年、さらなる飛躍を目指して本駒込へ移転リニューアルを果たした。席数とキッチン設備を拡充し、より表現の幅を広げた現在のスタイルへと進化している。一言で言えば、町中華の顔を持ちながら、その実態は実力派のモダンチャイニーズだ。 厨房に立つのは進藤浩二氏。新宿の老舗で研鑽を積み、名店の系譜を受け継ぎながらも、独自の“豊栄スタイル”を確立してきた料理人だ。自ら畑に赴き野菜を収穫し、全国から旬を取り寄せる素材主義。その姿勢は、料理の端々にまで表れている。ベースは上海料理。しかし発酵やスパイスの使い方に進藤氏らしい輪郭がある。伝統に立脚しながら、表現はあくまでボーダレスな中華料理だ。 「前菜三点盛り」。海老の醤油漬け、鰆、焼豚。視覚的には端正、味わいは明確。鰆はしっとりと脂を含み、海老はねっとりと旨味を蓄え、焼豚は甘い脂と香ばしさが余韻を引く。積み重ねた技術の安定感を感じる一皿。 「よだれ鶏」は、この店を語る上で外せない存在。山椒と唐辛子の連れる辛さ、そして複雑なタレの旨味。しっとりと火入れされた鶏肉に、痺れと香りが幾重にも重なる。辛味と香りの設計が明確で、記憶に残る一皿だ。 この流れを受けての「麻婆豆腐」。赤く艶めく餡、豆腐の白とのコントラスト。ひと口目は肉味噌のコク、続いて豆板醤の深み、最後に山椒の痺れが追いかける。辛味と旨味の設計が立体的で、白飯を欲する完成度。 そして進藤氏の個性がより色濃く出るのが、自家製「豊栄醬」を使った料理だ。「海老とマコモ筍の豊栄醬炒め」。ぷりっと弾ける海老、シャクシャクとしたマコモ筍。その間を縫うように絡む豊栄醬は、XO醬を思わせる複雑な旨味を持ちながら、どこか親しみやすい。発酵のニュアンスと香ばしさが重なり、後味にじんわりとコクが残る。 「豊栄チャーハン」も同じく豊栄醬を使用。米粒はパラリと立ち、卵のコクと醬の旨味が一体化する。海老の弾力がアクセントになり、噛むたびに豊栄醬の香りが広がる。オリジナル醬を核に据える一貫性が、この店の輪郭をはっきりさせている。 全体を通して感じるのは、上海料理を軸に四川のエッセンスを織り込み、自家製醬という武器で独自性を打ち出す構成力。ミシュラン・ビブグルマン掲載も納得の実力だが、決して高踏的にはならない。空間は整い、料理は真面目で、どこか温度がある。町中華の延長線にありながら、確かな技術と思想が通底する一軒。ご馳走様でした。 — 豊栄050-5590-2072東京都文京区本駒込3-1-8 COCOPLUS本駒込 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1323/A132301/13276558/