高円寺の町焼肉。その文脈の中で、頭ひとつ抜けた存在が『高円寺 焼肉ここち 本店』だ。2024年創業。だが勢いはすでに本格派。店主の木村舜徹氏は、国分寺の老舗焼肉店「焼肉 山水」で12年修行。祖母は市場でキムチ店、父は韓国料理店、兄は焼肉店と、三世代の韓国や焼肉のルーツを持つ。町焼肉の血筋と老舗仕込みの技術。その掛け算が、この店の現在地だ。あっという間に人気店へと駆け上がったのも納得である。

基本は「おまかせコース」
まずは「キムチ盛り合わせ」と「ナムル盛り合わせ」。祖母が市場で営んでいたキムチ店。その背景を思わせる発酵の深みがある。酸味は素直に立ち、胡麻の香りと青菜の食感が心地よい。焼きへ向かう準備としてちょうどいい。

続く「ユッケ」。赤身の鮮度が伝わる。ねっとりとした舌触りに、甘さを抑えたタレ。卵黄を崩すとまろやかにまとまる。添えられた韓国海苔で巻けば、磯の香りが加わり、旨味が引き締まる。

「海老刺し」。焼肉屋で海鮮を出すのはやはり意外性がある。だが浮かない。韓国料理の文脈の延長にある一皿だからだ。甘みの強い海老で舌を整えつつ、殻と尻尾は焼いて食べる。炭火で香ばしさをまとわせることで、自然と“焼き”へ接続する。珍しさで終わらせず、きちんと焼肉に回収する構成がいい。

いよいよ焼きへ。
全体を通して、肉の輪郭がはっきりしている。炭火の香ばしさを軸に、脂、赤身、ホルモンと展開する構成。老舗で積んだ時間が、そのまま焼きの精度に出ている。肉質のブレも少ない。京成立石の名店「幸泉」とも親交を持つなど、実力店と繋がる仕入れの地力があるからこその完成度だろう。町焼肉の価格帯にいながら、確実に一段上の仕上がり。
「タン」軽い熟成のニュアンス。焼き目が入った瞬間に香りが立ち、噛むと旨味がじわりと広がる。

「カルビ」脂の甘さが主役。炭火で弾けた肉汁とタレが絡み、王道の力強さを見せる。

「ロース」赤身のじっくりとした旨味があり、レアめで仕上げることで肉の輪郭がくっきり立ち上がる。

「イチボ(千日和牛)」きめ細かなサシとしっとりとした火入れ。脂は軽やかで後味が澄む。この一皿に完成度が宿る。

「ハラミ(塩・黒毛和牛)」厚みがあり弾力が心地よい。塩で旨味を立たせる直球勝負。

「ギアラ」脂の甘さとコリコリ感が共存。噛むほどに旨味が滲む。
「上ミノ」シャクッとした歯切れの良さ。火を入れることで甘みが立ち、食感のコントラストを作る。

「ホルモン」大胆なカットで食感に厚みを持たせ、味噌ダレが脂の甘さを引き上げる。ぷるんと弾ける脂に炭火の香ばしさが重なる。
「レバー」角が立ち、火を入れても滑らか。下処理の丁寧さがそのまま味に出る。

「ツラミ」追加。、薄切りながら味は濃く、ネギをのせれば香りと辛味が立ち、噛むほどに滋味が深まる。

締めは「テグタンスープ」。牛骨の出汁に唐辛子の辛味、溶き卵のまろやかさが重なり、ここまでの脂をきれいに整える。辛さはあるが角は立たない。焼肉の余韻を受け止める一杯だ。

そして最後はアイスでクールダウン。濃厚な肉の記憶をリセットする。

町焼肉の空気感をまといながら、その完成度は確実に一段上。三世代のルーツと老舗仕込みの技術が、いま高円寺で花開いている。派手な演出ではなく、肉の質と焼きの精度で評価を積み上げる一軒。だからこそ、あっという間に人気店へと駆け上がったのだろう。高円寺で焼肉を語るなら、いや、今後の東京の焼肉シーンで絶対外せない存在だ。ご馳走様でした。
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高円寺 焼肉ここち 本店
03-5356-9444
東京都杉並区高円寺北2-18-9 ベルテンポ 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1319/A131904/13301288/