2026.02.11 夜 エミリア=ロマーニャの風、鹿児島に吹く@わがえ イタリアン・ピザ 鹿児島・南薩摩 10000円〜29999円 ★★★★☆ 鹿児島の夜に、エミリア=ロマーニャの風を吹く。イタリア郷土料理店『わがえ』が掲げるのは“cucina tradizionale”。伝統料理を意味するその言葉どおり、軸はクラシックなエミリア=ロマーニャ料理のど真ん中。流行を追うのではなく、土地に根付いた料理の構造をそのまま大切にする姿勢が伝わる。創業はここ数年と新しいが、目指す方向は明確だ。遅い時間まで灯りを落とさず、鹿児島の夜にしっかりと食事を預けられる存在。 エミリア=ロマーニャ州は、ボローニャやモデナを擁する手打ちパスタ文化の中心地。ラグーやシャルキュトリー、詰め物パスタといった郷土料理で知られる美食の土地だ。その文脈に触れた経験が、この店の料理の軸になっている。シェフは現地での経験も持ち、その空気を知った上で鹿児島で表現している。経験を声高に語るのではなく、皿に自然と滲ませるタイプ。だから料理に説得力がある。 その文脈を体現する一皿が「トリテリーニブロード」。エミリア=ロマーニャの冬を象徴する詰め物パスタのクラシックだ。澄み切ったブロードをひと口含めば、鶏や牛の旨味がじんわりと広がる。続いて小さなトリテリーニを噛むと、薄い生地の内側から濃密な肉のフィリングが溢れ出す。透明感とコク、その対比が心地いい。ブロードの澄みがあるからこそ、詰め物の旨味が際立つ。これは本当にめちゃくちゃうまい。記憶に残る味。 そして、他の料理もきちんとレベルが揃っている。 「生ハム盛り合わせ」は王道の一皿。パルマを擁するエミリア=ロマーニャは生ハムの名産地としても知られるが、その空気を思わせる艶やかな薄切り。体温でとろけ、塩気の奥から甘みが広がる。サラミのスパイス感、脂のコクが重なり、味わいは立体的。パンと合わせれば小麦の香りと一体化し、ワインが自然と進む。 「豆スープ」は静かな存在感。とろりとした質感の中に豆の粒感を残し、オリーブオイルの青い香りが全体を引き締める。塩の輪郭が明確で後味は澄んでいる。こういう皿に料理人の安定感が出る。 「イワシパスタ」は鹿児島の海との接点。青魚の旨味とほろ苦さをトマトとハーブで包み込み、オイルベースで軽やかにまとめる。アルデンテの火入れも的確で、ソースとの一体感も良い。エミリアの肉文化とは対照的に、土地の食材を自然に織り交ぜる柔軟さが光る。 全体を通して感じるのは、一本筋の通った方向性。エミリア=ロマーニャという軸をぶらさずに置きながら、鹿児島という土地にきちんと着地させている。そのバランスが心地いい。遅い時間まで開いている安心感も含めて、使い勝手と料理の完成度が両立している一軒だ。あの「トリテリーニブロード」を思い出すだけで、また足が向いてしまうことだろう。ご馳走様でした。 — わがえ070-4568-1234鹿児島県鹿児島市樋之口町10-45 リンナイビル 1Fhttps://tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46017803/