麻布十番という街は、生活感もあれば外向きの顔もあり、老舗も新顔も同じ通りに並んでいる。雑多で、少し騒がしくて、それでいて日常に溶け込んでいる。その中で、淡々と寿司を握っているのが、麻布十番の一角に暖簾を掲げる『すし家 祥太』だ。その姿勢が、最初から最後まで一貫している。

この店は、「かねさか」の系列に連なる一軒だ。久兵衛を源流とし、そこから独立した「鮨 かねさか」の名は、今や一店の評価に収まらない。名店と呼ばれる店を含め、数えきれないほどの弟子が巣立ち、それぞれの場所で結果を出している。その事実自体が、どんな理屈よりも雄弁だ。『すし家 祥太』もまた、その流れの中にきちんと位置づけられるカウンターである。
料理は「茶碗蒸し」から。蛤出汁の澄んだ旨味に、蟹餡の甘みを重ねる構成。

続く「海老芋と菜の花のおひたし」は、一度味を含ませてから揚げる仕事が効き、海老芋のコクと甘みがきれいに残る。この海老芋、素直にうまい。

刺身のラインナップは、「赤貝・アオリイカ・雲丹・平目」。素材の状態をそのまま見せる一皿で、この日の魚のコンディションを確認する役割を果たす。

そして、ここから握りが始まる。最初の一貫が「石鯛」。身はいかっており、噛んだ瞬間の反発力がはっきりしている。

「縞鯵」は脂と香りのバランスが良く、思わずうまいと声が出る。

「墨烏賊」は塩をやや強めに効かせ、旨味の輪郭をくっきりさせる。

ここで一度つまみとして「太刀魚の塩焼き」。脂の質を見極めた火入れで、香ばしさとジューシーさが共存する。

再び握りに戻り、「赤身」は鉄分の旨味が素直、

「中トロ」は脂に溺れずキレがある。

「小肌」は酸の入り方が穏やかで、締めすぎない判断が、この店の仕事の丁寧さを示す。

ここで「ズワイガニ」。甘み、繊維感、温度、そのすべてが噛み合い、素直にめちゃくちゃうまい。

合間に挟まれる「べったら漬け」で、口とリズムを整える。

「子持ち槍烏賊」は食感と旨味の両立が心地よく、

「鯵」は身質の良さが際立つ。

「キンキ」は脂の質で押し、

「鱚」は軽やかで、

「鱈の白子」は温度管理が的確、舌の上でほどける。

「牡丹海老」は甘さが前に出すぎず、

「金目鯛」は安定感がある。

「煮蛤」は仕事の積み重ねを感じさせる一貫だ。

さらに「車海老」は火入れの加減がよく、

「喉黒」は脂を活かし、

「ミル貝」は歯切れの良さが印象的。

「紫雲丹」は香りと余韻で、終盤へと自然に導く。

締めは「穴子」。ツメに頼らず、身のふくよかさで勝負する構成。

「ねぎま汁」は鮪節の香りが立ち、温度と香りでコース全体をきれいに回収する。

鮪たっぷりの「巻物」まで含め、流れに無駄はない。

『すし家 祥太』は、分かりやすい個性で語る店ではない。だが、名店を含め多くの弟子を抱える系譜の中で、何を大切にしてきたかは、料理を食べれば分かる。江戸前鮨を技術として、日々きちんと積み重ねている。その事実が、この店の価値だ。ご馳走様でした。
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すし家 祥太
03-6722-6588
東京都港区麻布十番3-3-10 LANIビルⅡ 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13241750/