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2026.02.01 夜

シンガポールで出会う、行列のできる香港粥@妹記

中華料理

1000円〜2999円

★★★☆☆

シンガポール・オーチャードの商業施設、シャウス・スクエアの一角に暖かな灯をともすのが『妹記(Mui Kee Orchard)』。そのルーツは1946年、香港・旺角の街角に開かれた粥の屋台にある。戦後の混乱期に、ひと椀の温かい粥で人々の空腹と心を満たしてきた歴史。その味と精神を3代目が引き継ぎ、国境を越えてこの地に根を張った。看板に掲げられる“香滑生滾粥”とは、香り高く滑らかな粥を意味し、熱々の粥に生の具材を入れてその場で仕上げるという広東式の調理法。

今回いただいた「生滾皮蛋瘦肉粥(CENTURY EGG WITH SHREDDED MEAT CONGEE)」は、その真髄が詰まった一杯。金華ハムや干し貝柱から丁寧に引いた出汁がベースにあり、塩気は控えめながらも奥行きのある旨味が全体を包み込む。そこに赤身の豚肉からにじむコクが重なり、ピータンの熟成香がふわりと広がる。ネギの辛味が香りに立体感を加え、全体のバランスが絶妙に整っている。豚肉はしっとりと火が入り、パサつきのない柔らかさ。レンゲを運ぶたび、旨味のレイヤーが滑らかにほどける。

「油条(揚げパン)」は、中華圏の粥文化に欠かせない名脇役。カリッと揚がったスティック状のパンを粥に浸し、旨味を吸わせて食べるのが定番スタイル。粥のなめらかさに対するザクッとした食感、そして油の香ばしさが加わることで、単調になりがちな口内にアクセントをもたらす。ただ、好みは分かれるところで、個人的には香ばしさよりも油の重さがやや気になったというのが正直なところ。

卓上には胡椒と醤油が控えめに置かれている。味の完成度は高く、基本的に調味料は不要。しかし、ほんの少しの胡椒が香りに立体感を加え、あるいは醤油を数滴落とせば塩気が立ち上がり、軽やかな味変として機能する。あくまで“足す”というより、“景色を少し変える”ような控えめな役割。

『妹記(Mui Kee Orchard)』の粥は、肩肘張らずに、ただ自然体で美味しい。気取らず、媚びず、静かに体に染み入るような味わいがある。買い物帰りの喧騒のなかで、ふと立ち寄って温もりをもらえる場所。ご馳走様でした。

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