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2026.01.28 昼

奈良、甘さの声がひそむ場所@萬御菓子誂處 樫舎

デザート

奈良市

1000円〜2999円

★★★★☆

奈良・ならまちの静かな一角、格子戸の奥に、息をひそめるように佇む『萬御菓子誂處 樫舎』。屋号が物語る通り、ここは“素材に合わせ、季節に合わせ、客に合わせて”菓子を誂える場所。華やかさや派手さを排しつつも、提供の温度や間合い、器の佇まいに至るまで、研ぎ澄まされた美意識が空気をつくり出す。その一口に込められた意志は、静かに、そして確かに心に届く。

例えば「葛菓子」。一見すると何の変哲もない小さなキューブ。しかし、それが奈良名産の吉野本葛であれば、その背景にある文化的厚みが見えてくる。400年以上の歴史を誇る葛の本場・吉野。その清らかな水と職人の手によって晒され、練り上げられた葛粉は、透明度、粘性、口どけのすべてにおいて別格。ひんやりとしたその一片を口に含むと、とろりと溶ける粘りと控えめな甘さが広がる。

「おぜんざい」は、丹波大納言の風味が主役。そこに浮かぶのは、よもぎ・粟・赤きびで練られた三種の餅。それぞれ異なる個性を持ち、噛むたびに食感と香りが交錯する。もちもち、ぷつぷつ、青々しい香り、香ばしい穀味。甘さはごく穏やかで、むしろ穀物の旨味が前に出る。

「饅頭蒸し」もまた忘れがたい。丹波の山の芋を用いた蒸し生地に、こし餡をふっくらと包む。蒸籠の中でほかほかと仕上げられ、蓋を開ければ湯気とともに、山の芋特有の土の香りが立ちのぼる。

今回案内されたのは二階席。落ち着いた設えとゆとりある間合いの中で、静かな時間を過ごすことができたが、耳にした一階席での“体験”はまさに別物だという。職人による和菓子の独演会とも呼ぶべき空間。目の前で所作が繰り広げられ、一皿ごとに語られる背景や温度、その“間”までもが味の一部として立ち上がる。まさに次回は、ぜひそちらで“菓子の語り”を聞いてみたい。

『萬御菓子誂處 樫舎』。ここは、流行の甘味とは一線を画す、土地と素材と人の記憶を菓子に変える場所。何かを“食べた”というより、静かに“受け取った”という感覚が残る。奈良を歩く理由が、また一つ、ここに生まれた。ご馳走様でした。

萬御菓子誂處 樫舎
0742-22-8899
奈良県奈良市中院町22-3
https://tabelog.com/nara/A2901/A290101/29002296/

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