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2026.01.28 昼

中華の技に、奈良の記憶が宿る。@枸杞

中華料理

奈良市

10000円〜29999円

★★★★★

奈良・ならまちの築古の町家に移転した『枸杞』。格子戸をくぐり抜ければ、蒸籠の湯気と香辛料の香りがふわりと迎えてくれる。かつては紀寺町にて2021年6月にスタートしたが、現在はならまちの路地裏で完全予約制のランチとディナーを展開中。静けさに包まれた古民家の空間に、点心の湯気と香辛料の香りがそっと立ち上がる。

厨房を預かるのはシェフ・宮本和幸氏。広東料理の名門「福臨門酒家」などで腕を磨き、地元奈良に帰郷して独立。伝統的な技術に裏打ちされたベースの上に、奈良の素材を重ねていくスタイル。自家菜園も運営し、唐辛子や青菜などは自ら育てる徹底ぶり。調味料の使い方も力技ではなく、あくまで食材に寄り添う設計。料理の輪郭ははっきりしているのに、食べ終えた後はどこかしら体に馴染んでいる。そんなバランス感覚が魅力だ。

ランチは点心を中心としたコース仕立て。蒸し物だけでなく、前菜、スープ、麺料理まで幅広く組まれており、軽やかな構成ながら中華料理としての幅と奥行きがしっかりある。特に冒頭に登場する「前菜盛り合わせ」で、この店の基礎技術の高さと発想の引き出しの多さが一気に伝わってくる。点心という括りではまったく収まらない、中華料理としてのポテンシャルにいきなり惹き込まれる。

「よだれ鶏」は大和肉鶏のしっとりした質感に、自家製辣油の香ばしさとコクが絡み、辛さに頼らない奥行きある味わい。「カンパチの椒麻ソース」は青山椒の爽やかな痺れが脂の乗った身を引き締める。「豚耳の紅油ソース」は自家栽培の唐辛子が甘辛く効き、コリコリした歯応えが心地よい。「片平あかねの醤油漬け」は奈良の赤カブ。赤と白のコントラストが美しく、優しい酸味で箸を進める。「スパイシーカシューナッツ」は香ばしくスパイシー、ざくっとした食感がアクセントに。どの皿も醬の使い方が巧みで、前菜ながらシェフの技術と構成力をはっきりと伝えてくる。

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スープは「養生湯菜」。山伏茸に飛鳥蓮根、干し貝柱と干し海老を合わせた一杯で、ふわりととろみのある口当たりから、乾物と野菜の旨味がじわじわと広がっていく。香りの立ち上がり、舌に残るコク、喉を通る温かさまで設計されているような精妙さ。薬膳的な要素を感じさせながらも、押しつけがましさは一切なく、ひたすらに「美味しいスープ」として完成されている。

蒸し、焼き、揚げ。それぞれの技法に迷いがなく、餡と皮、具材と調味のバランスが一貫して冴えている。点心という枠を超えて、中華料理としての手仕事と構成力がにじみ出る流れ。繊細さと力強さが交差するパートだ。

「小籠包」ヤマトポークのスープがじゅわり、薄皮に宿る確かな技術。
「五目焼売」豚・海老・椎茸の三重奏、噛むほどに旨味がほどける。

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「海老ニラ蒸し餃子」ぷりぷり海老と香味野菜、つるりとした皮が支える。
「からし菜の蒸し餃子」ほろ苦さと香りがふわり、生地の完成度が際立つ。

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「咸水角(ハムスイコー)」サクもちの皮に甘辛い餡、揚げ点心ならではの楽しさ。
「大根餅」外は香ばしく中はとろり、自家製醬が芯から旨味を引き出す。

「湯葉の揚げ巻き」五種のきのこと慈姑、野菜の力を湯葉がまとめ上げる。

「焼豚饅」もっちり皮に包まれた甘辛焼豚、静かに記憶に残る一品。

「古代米の中華ちまき」奈良の古代米に、大和肉鶏や海老、椎茸、アヒルの塩漬け卵を包み込む。モチモチの米が具材の旨味を抱き込み、こんだけ葉の香りがふわりと抜ける。地元の力をぎゅっと閉じ込めた、堂々たる一包み。

「汁なし担々麺」ヤマトポークのそぼろに、自家製の辣油と醬が絡む濃密な味わい。しもきた春まななど大和伝統野菜が清涼感を添え、地元の滋味と香辛料の刺激が高次元で交差する。美味しさのベクトルが、一口ごとに加速していくような一皿。

『枸杞』の料理は、伝統的な中華の技術を芯に持ちながらも、その輪郭には奈良の素材や風土が自然とにじむ。唐辛子や青菜は自ら育て、発酵や醬にも独自のアプローチを重ねていく。食材の扱いに迷いがなく、点心の一つ一つに至るまで、積み重ねた技術と構成力が静かに響いてくる。この完成度を知ってしまった今、次は夜のコースに身を委ねてみたくなる。ご馳走様でした。

枸杞
奈良県奈良市
https://tabelog.com/nara/A2901/A290101/29015215/

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