2026.01.26 昼 一杯ごとに、コーヒー体験が深まる@グリッチコーヒー&ロースターズ 喫茶店・カフェ 秋葉原・神田・水道橋 〜999円 ★★★★☆ 神保町の一角に構える『グリッチコーヒー&ロースターズ』。2015年創業。オーナーの鈴木清和氏は競技会の現場を経験してきたバリスタで、この店では浅煎り、シングルオリジン、ハンドドリップという構成を一貫して続けている。理由を強く語ることはないが、豆本来の味をそのまま出したい、という考え方なのだろう。ブレンドで整えず、焙煎で覆わず、抽出も機械任せにしない。その姿勢は空間にも表れていて、余計な装飾はなく、コーヒーに集中するための環境が整っている。 まず、いいのが、豆を選ぶ時間だ。カウンターに並んだシングルオリジンを前に、スタッフと会話をしながらリコメンドを聞く。フレーバーの方向性や、その日の気分に合わせた提案があり、気になった豆はその場で香りを確認させてくれる。焙煎度や産地を一方的に説明されるのではなく、選ぶ側の感覚を尊重しながら進む。このやり取り自体が、すでに一杯の一部になっている。 そこから選んだのが「ブエノスアイレス」。アタックは完全にローズやベリー系の紅茶。香りが先に立ち、口当たりは軽く、酸もやわらかい。ハンドドリップらしく輪郭はクリアで、雑味がなく、フレーバーだけが素直に立ち上がる。ただ、そのまま華やかさだけで終わらない。余韻に入ると、甘さとともにコーヒーとしての苦味とコクが戻ってきて、きっちり着地する。浅煎りの良さを出しながら、線は細くなりすぎない。これが焙煎や抽出の演出ではなく、豆そのものだけで成立していると考えると、その個性には素直に驚かされる。 もう一杯は「ブラジル」。こちらは世界的な大会で優勝したロットで、価格もきっちりそれに比例している。一杯の値段は高めだが、抽出や説明で特別感を煽ることはない。レーズンやナッツ、柑橘のニュアンスが穏やかに重なり、最初から最後までバランスが崩れない。 正直に言えば、個人的にコーヒーの偏差値は高くない。産地や精製を語れるほどの知識もない。ただ、浅煎りやシングルオリジンという方向性があるおかげで、豆ごとの個性に気づけた。そのこと自体が、素直に嬉しかった。選ぶ時間があり、香りを確かめ、ハンドドリップで淹れられた一杯を飲む。その流れの中で、理屈抜きに違いが伝わってくる。ご馳走様でした。 — グリッチコーヒー&ロースターズ03-5244-5458東京都千代田区神田錦町3-16 香村ビル 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13180698/