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2026.01.23 夜

料理は肴に、肴は料理に。@荒木町たつや

日本料理

四ツ谷・市ヶ谷・飯田橋

30000円〜49999円

★★★★☆

花街の気配が今なお残る荒木町の路地裏に、2017年、その暖簾は静かに掲げられた。『荒木町たつや』。名店・神楽坂『石かわ』で腕を磨き、同グループの姉妹店『蓮』では料理長を任された石山竜也氏が、自らの名を冠して開いた一軒だ。出店にあたり長い時間をかけてこの街を選んだという話からも、料理のみならず空気や土地にまでこだわる姿勢が伺える。

この店を象徴する言葉を一つ挙げるとすれば、日本酒と歩幅を揃える料理たち。料理としての品格をしっかりと備えながら、同時に日本酒のアテとしても高い完成度を発揮する。そのどちらか一方に寄るのではなく、両立させていることにこの店の面白さがある。塩気の塩梅、出汁の温度、香りの立たせ方、そして余韻——そのすべてが酒を自然と呼び込みながら、一皿としての独立性も損なわない。

コースは、「白子」に菜の花やクロアワビタケを合わせた料理から幕を開ける。とろける白子の濃厚な旨味に、菜の花のほろ苦さ、クロアワビタケの深い出汁感が合わさり、静かな立ち上がりながら心を掴まれる。

続く「鯛とレンコンの春巻き 梅風味」は、香ばしい皮の中に鯛のふっくらとした身とレンコンの歯応えを包み込む。梅の酸味がアクセントに効き、素揚げにされたクワイが軽やかな苦味と心地よい食感を添える。

白味噌椀は、コクと香りの構成が光る一杯。まろやかな白味噌の甘みがクエの旨味をふわりと包み、ナメコのとろみが全体を優しくまとめ上げる。小さな蕪が控えめに添えられ、ほのかな甘みと食感が一瞬のアクセントとして響く。黒胡椒の香りがすっと立ち、穏やかな味わいに静かな輪郭を与えていた。

「お造り」はモンゴウイカ、シマアジ、ヒラメの三種盛り。イカは厚みのある滑らかな質感にスッと刃が入り、シマアジは脂と身質のバランスが抜群。ヒラメは清らかな旨味が広がり、引き算の美学が生む輪郭の美しさを感じさせる。

焼き物は「マナガツオと長芋の味噌焼き」 。しっとりと火入れされたマナガツオに香ばしい味噌が重なり、花椒の軽やかな痺れがふわりと鼻を抜ける。長芋のほくほくとした食感が絶妙な緩衝材となり、香りと旨味のバランスがとにかく心地よい。

「鴨と水菜の炊き合わせ キノコあんかけ」は、肉と青菜の力強さとやさしさが同居したような一皿。鴨のしっとりした火入れ、水菜のシャキ感、舞茸の香りと出汁のあん。構成はシンプルながら、味の層は深い。

「漬物盛り合わせ」は、茗荷の甘酢漬け、ちりめん、赤蕪などが皿の上に静かに並び、味の間合いを整える。どれも丁寧な手仕事を感じさせる控えめな美味しさで、次の一皿への橋渡しとしても機能する。

「メバチマグロとシシャモの南蛮漬け」は、なめろうのような濃密さのあるマグロに、そこへ味噌と薬味のコクが重なる。南蛮漬けのシシャモは酸味で切れをつくり、口内の温度をリセットしてくれるような存在。

終盤は、鴨出汁を使った二種類の雑炊。ひと椀目はキノコと香味野菜を合わせたもので、七味の香りが立ち上がり、キノコの旨味がじんわりと出汁に溶け込む。

もう一椀は柚子風味の雑炊。同じ鴨出汁ながら、柚子皮の清々しさと三つ葉の青さが前に出て、印象をがらりと変えてみせる。薬味の使い分けでここまで輪郭が変わるかと驚かされる。

最後の一皿は、白ワインのジュレとマスカルポーネのクリームを主軸に据えたデザート。瑞々しくカットされた金柑が散らされ、その果皮の苦みと酸味が全体を引き締めている。

『荒木町たつや』の料理には、華やかさや意外性ではなく、積み重ねによって生まれる説得力がある。品格ある料理を貫きながら、それが同時に酒を引き立てる肴にもなっているという二面性。そのどちらにも偏らない、絶妙なバランス感覚がこの店の真骨頂だ。日本酒と一緒に味わうことで、さらに料理の奥行きが広がり、体に馴染むような余韻が残った。ご馳走様です。

荒木町たつや
03-6709-8087
東京都新宿区荒木町10 タウンコートナナウミ 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130903/13214727/

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