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2026.01.07 夜

いつもは、いつもの、いつもだった。@いつも

居酒屋・定食

六本木・麻布・広尾

10000円〜29999円

★★★★☆

西麻布の住宅街の奥、ほの暗く照らされた石畳の小径を進んだ先に、静かに佇む一枚扉。そこが『いつも』——かつて六本木で会員制レストランの先駆けとして知られた店が、場所を変えてたどり着いた“隠れ家”の完成形だ。六本木時代の賑やかさを感じさせる1階と、より洗練された2階。どちらのフロアにも共通するのは、気取らずに楽しめる心地よさ。肩肘張らずに過ごせるのに、どこか背筋が伸びるような高揚感がある。店名の通り、ここには変わらぬ「いつも」が流れていた。

まず供されたのは「七草粥」。優しさの塊のような一品で、年始の胃に沁み渡る。粥の炊き加減は、米の粒感がきちんと残りながらもとろみがあり、滋味深い出汁の余韻と相まって、まさに整える序章。

続く「バーニャカウダ」は、この店を語るうえで欠かせない定番のひと皿。当時から変わらぬ存在に、思わず顔が綻ぶ。氷の上に立ち上がるようにあしらわれた彩り野菜——チコリ、ラディッシュ、トマト、そしてあの“サボテン”の葉。そう、サボテンを食べられるのは、ここで初めて知った。シャクっとした独特の食感に、ほのかな酸味が加わってクセになる

「鮪の炙り タプナード添え」は、ねっとりとした赤身の旨味に、オリーブとアンチョビの塩味が絡みつく。仕立ては端正ながらも力強く、酸味の効いた柑橘のアクセントが後味を引き締める。

「魚の包み焼き サフランソース」は、ほろっと崩れる魚を薄皮で丁寧に包み、焼き目の香ばしさがサフランの華やかな香りと共鳴する。濃厚なソースに埋もれない繊細な味わいが好印象。

「トリュフのクリームパスタ」は、滑らかで濃厚な乳脂と芳醇な香りの饗宴。クリームに浸るようにして供される麺は、アルデンテを少し越えた絶妙な加減で、トリュフの香りが鼻腔を支配する。体が勝手に頷いていた。

「カツサンド」は、意表を突くオープンサンドの形。ふわふわのパンにロースカツ、そこにたっぷりとソースがかかる。ソースはややスパイシーで、チーズのコクとともにどこかジャンキーな色気をまとっている。

「山形牛のロース」は、肉の繊維を断ち切るような歯切れの良さと、口の中に広がる脂の甘みが絶品。山葵の辛味で脂をリセットすれば、また次の一口が欲しくなる。

そして「フォアグラとトリュフの土鍋ご飯」。炊きたての白米に、こんがり焼いたフォアグラ、そして惜しげもなく散らされた黒トリュフ。香りが、熱が、旨味が、三位一体で押し寄せる。

デザートは、氷の宝石箱に詰められた「季節の果物」と、蓋つきの瓶で供される「プリン」。フルーツはどれも完熟、華やかな盛り付けが最後まで気持ちを弾ませる。プリンは卵の風味が濃く、口に入れると懐かしさと新しさが同居する。

何年ぶりの訪問だったか。だが、不思議とその空気は変わっていない。変わったのは場所だけで、『いつも』は“いつもの”『いつも』だった。その姿勢、その味わい、その空間——記憶の中にずっと在り続けていたかのように、そこにあった。ご馳走様でした。

いつも
東京都港区西麻布1-10-8 ROJIビル
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13252908/

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